【広州=川上尚志】香港の「逃亡犯条例」改正案に反発する無許可の抗議行動は1日も続いた。同日午後にはデモ隊が香港国際空港の入り口周辺を一時封鎖し、地下鉄やバスなどの交通網が混乱した。2日もストライキなどの活動が予定されており、事態の収束は見通せない。中国メディアはデモの制圧訓練をする人民武装警察部隊(武警)の映像を報じるなど、デモ隊へのけん制を繰り返している。
1日、香港では国際空港への交通を妨害する抗議活動がインターネットで呼びかけられた。これに応じたデモ隊が同日午後にターミナルの入り口周辺にバリケードを築き、警察や中国に対する批判を叫んだ。
警察が現れるとデモ隊の一部は空港ターミナル内に入り込もうとし、空港側が出入り口を一時的に封鎖した。この後、警察側が強制排除を辞さない考えをSNSで警告すると、デモ隊の大半は空港から撤収した。
しかし、デモ隊の一部は空港と市の中心部を結ぶ鉄道の線路に鉄パイプを投げ入れたり、空港周辺地域の道路を車で封鎖したりするなどの妨害活動を続けた。空港に至る交通網が大きく混乱し、香港空港に到着した多くの旅客が足止めされる事態となった。
香港メディアによると、1日のデモの影響で約30の航空便が欠航した。同空港ではデモ隊が8月9~13日に抗議活動を展開。出発ロビーなどを占拠した結果、計約1千便が欠航になった経緯がある。
香港では8月31日にも無許可のデモが発生した。デモ隊の一部は政府庁舎に火炎瓶を投げるなど過激化し、警察は催涙弾や放水砲を使って強制排除した。香港メディアによると同日のデモの逮捕者は63人、負傷者は31人にのぼった。
デモ参加者は条例改正案の完全撤回や、有権者が1人1票を投じる普通選挙の導入など「五大要求」を掲げている。香港警察は8月30日、民主活動家に加え、民主派の立法会(議会)議員3人を逮捕した。反発したデモ隊は2日もストライキや学生の授業ボイコットなどを呼びかけている。
中国メディアは過激化するデモへの批判を強めている。共産党機関紙の人民日報(電子版)は8月31日、デモ隊の一部が路上で火を放ったことなどについて「このような暴行をまだ容認するのか」というタイトルの記事を配信。「香港の(秩序を守る)『防衛戦』は、もはや引き返す余地が無い」と主張した。
中国国営テレビ(CCTV)は8月31日、香港に隣接する深圳市に集結している武警が放水車などを使いデモ制圧の訓練をする新たな映像を短文投稿サイトに投稿した。
CCTVは8月29日にも、人民解放軍の香港駐屯部隊が交代するため香港に入る映像を流している。いずれも香港の抗議活動をけん制する思惑があるとみられる。
中国当局は海外に対する情報発信の強化にも乗り出した。中国外務省は8月31日、海外メディアの複数の記者に対し、同日のデモで火炎瓶を投げる参加者などの写真をメールで送信した。デモの過激な側面を紹介し、香港当局による取り締まりの正当性を訴える狙いがあるとみられる。
2019-09-01 09:49:00Z
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49277890R00C19A9FF8000/
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