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Wednesday, July 8, 2020

パンデミックはAirbnb(と短期賃貸市場の混乱)に終わりをもたらすか - WIRED.jp

ジェームズ・テンパートン

『WIRED』のデジタルエディター。(@jtemperton

Airbnbの最高経営責任者(CEO)であるブライアン・チェスキーは、重みには慣れている。元ボディビルダーで現在38歳の彼は、11年間で、自身の物件貸出しの夢を、たったひとつのエアマットレスから、数百億ドル(数兆円)のスタートアップ企業のサクセスストーリーへと引き上げた。だが宿泊場所の提供者であるホストの怒りや負債が積み重なっていくなかで、コロナウイルスのパンデミックという重荷は、チェスキーには耐えられないものになるかもしれない。

数字は壊滅的だ。オンラインで予約状況を分析する会社のAirDNAによると、Airbnbの新規予約は85パーセント減少しており、キャンセル率は90パーセント近くに上る。3月にAirbnbのプラットフォームで生まれた利益は前年の同じ月に比べて25パーセント減となっていて、予約ぶんでは10億ドル(約1,070億円)が消えた[4月22日現在]。世界の多くの場所でロックダウンが続いているため、この数字はすぐにはもち直しそうにない。

一部の人にとっては、Airbnbの苦境は幸運となる可能性を秘めている。プラハでは政府が今回のパンデミックを利用して、地元住民が利用できる住居の供給を奪ってきた、急成長中の短期賃貸の市場に対するコントロールを取り戻そうとしている。ほかの都市もすぐに後に続くかもしれない。

ホストはこれをAirbnbの破滅と呼んでいる。だがこれはどちらかというと薬に近い。Airbnbは「地元のホストによって運営されている」と主張するが、現実はかなり違う。確かにAirbnbには、プラットフォームに掲載している物件に住んでいるホストも多くいる。だが、米国全土を含む多くの市場では、居心地のいい空き部屋を使って小遣い稼ぎをするためにAirbnbに部屋を掲載している人よりも、「プロ」のホストのほうが多いようだ。

分析会社のグローバルデータ(GlobalData)によると、Airbnbはパンデミックの影響で、ホストのコミュニティの「かなりの割合」を失う可能性もあるという。地元住民や住宅当局を悩ませるこうした「プロ」のホストは、もうすぐ何千人規模でAirbnbから流し出されることになるかもしれない。

Airbnbの年になるはずだった2020年

2020年はAirbnbの年になるはずだった。最近500億ドルから700億ドル(約5兆3,500億円から7兆5,000億円)という評価額を得た同社は、20年の株式公開を目指している。だが、2020年春時点での評価額は300億ドル(約3兆2,100億円)に満たない。コロナウイルスが発生する前でさえ、Airbnbは規模を利益に変えるのに苦戦していた。19年にはコストが53億ドル(約5,700億円)に高騰し、6億7,400万ドル(約722億円)を失った。

こうした数字の背景にあるのが、Airbnbのホストたちだ。ホストには仕事を退職した別荘のオーナーから、巨大だが脆弱な賃貸ビジネスを行なっている投資家まで、さまざまな人たちがいる。前者は安定した副収入がなくなるのを嘆くだろう。一方で後者は、いままさに経済的な破滅に直面している。Airbnbがもたらす市場崩壊を招くような賃貸利益を頼りに企てられた、一種のポンジ・スキームとも言えるような自身のビジネスモデルがコロナウイルスのせいで塵となるからだ。

この危機の規模を理解するには、Airbnbが貸別荘会社ではなく、ホテルチェーンだということを理解する必要がある。実は、同社の規模は世界最大だ。Airbnbの掲載数は世界中で700万(個々の部屋数ではなく掲載数)に上る。これはトップ10のホテルチェーンの合計客室数である548万室を上回っている。

多くの市場では、Airbnbの掲載物件の実に半数が、ほかに物件をひとつ以上掲載しているホストによるものだ。家族経営の小さなビジネスは少なく、「家族経営型の不動産投資会社」とでも言うべき形態が多い。世界中でロックダウンが実施されると、公衆衛生当局者にとっては非常に残念なことに、こうしたホストの一部は、しっかりと清掃してコロナウイルス対策も施した物件を宣伝するようになった。

AirDNAのデータによれば、110万件あるAirbnbの米国の掲載物件のうち約60万件は、ほかに物件をふたつ以上掲載しているホストによるものだという。また、110万件のうち約60万件は、1年のうち6カ月以上利用可能となっている。これらはどちらも、シェアリングエコノミーの貸別荘というよりもホテルの客室に近い物件を判断するための、鍵となる指標だ。さらに、こうした掲載物件の多くは「また貸し」物件で、Airbnbや「Booking.com」などのオンラインプラットフォームを通じて物件をまた貸しすればかなり高い料金を得られることを知っていて、ローンを組んで長期的に多数の物件を確保している会社や個人によって運営されている。

このビジネスモデルは特にロンドンやパリ、バルセロナといった観光客に人気の都市で、賃貸のアービトラージ(サヤ取り)ブームを巻き起こした。YouTubeの動画や高額なプライヴェートイヴェントでは、Airbnbを使ってビジネスを行なう事業者が、この手っ取り早くもうけられる計画の利点を絶賛している。

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July 08, 2020 at 09:16PM
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