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Friday, October 30, 2020

学術会議問題で躓く菅内閣、根底には「言葉の貧困」(JBpress) - yahoo.co.jp

 (舛添 要一:国際政治学者)  臨時国会が始まった。28日からは、菅首相の所信表明演説に対する代表質問が行われたが、日本学術会議の任命拒否問題などについて、苦しい答弁が続いた。高い支持率でスタートした菅政権であるが、ここに来て躓いているような感じがする。  いずれの世論調査でも支持率が低下しており、たとえば日経新聞の調査(10月23~25日に実施)によると、内閣支持率は63%で、先月よりも11%も低下している。逆に、不支持率は28%で9%増えている。支持率は、とくに女性では17%減、18~39歳の若年層では15%減である。 ■ 支持率低下の原因は学術会議問題の対応のまずさ  この支持率低下の最大の理由は、日本学術会議の任命拒否問題である。先の日経新聞の世論調査でも、この問題に関する政府の説明を、「不十分だ」と考える人が70%に上り、「十分だ」という人は17%のみである。一般的に人事については、任命権者がその理由を述べないこととなっており、学術会議の件もその例外ではない。  しかし、この問題が明るみになり、批判の声が高まったときの対応があまり上手くなかった。日本学術会議に改革のメスを入れなければならないことは確かであり、先の日経新聞の調査でも、この組織を行政改革の対象とすることに、「賛成」が62%と多く、「反対」は22%と少ない。

■ コロナ対応が最優先なのに、いまここで学術会議改革に手を付けるのはミス  菅政権の対応を「戦略ミス」というのは、第一に政権発足時には低姿勢でミスを少なくする、つまり、ウオーミングアップ、慣らし運転で静かに始動するという姿勢でなかったことである。  従来は学術会議が推薦する候補者をそのまま任命してきたが、この慣例を破れば、野党を含め学界や世論から大きな反発が生じることは予想されたはずである。そのことに考え至らなかったとすれば、それは想像力の欠如である。  新型コロナウイルスの感染拡大に対応せねばならない今、この組織をすぐに改革する喫緊の理由はない。しかも、政権は発足したばかりなのである。これは、多くの時間とエネルギーを割くべき課題ではない。政治とは選択であり、政策に優先順位をつけることである。たいへん無駄な選択をしたと言うしかない。  菅首相は官房長官を長く務めたこともあって、安倍政権の継承という色彩が強く、新政権ということを目立たせたい気持ちも分からないでもない。携帯電話料金の引き下げ、デジタル庁の創設、不妊治療の保険適用など次々と具体的な政策を掲げたのも、そのためである。これらは、右翼とか左翼とかいった政治思想とは無関係な身近な課題であり、広範な国民が歓迎するところである。 ■ 任命拒否で「左翼嫌いの右翼」のイメージが  その意味で、第二に、イデオロギー色が付着してしまったのはまずい。8年間近く官房長官職を務めていたときは、政治的に中立な実務型、官僚型政治家の顔を国民に印象づけてきた。ところが、今回の任命拒否問題で、「左翼嫌いの右翼」という烙印を捺されることになってしまった。  そういう印象を残さないためには、任命拒否の対象に右翼的意見の候補者を数名入れる(そういう候補がいればの話だが)ということをすれば、政治的立場に関係なく自分の判断で任命したと主張することもできたであろう。そのような才覚を働かせることのできる側近や官僚が不在だったのは残念である。  しかも、「安全保障関連法に反対する学者の会」に賛同した学者は、105人中、拒否された6人以外にも10人はいる。この会を標的にしたのならば、首尾一貫しない。菅政権の情報収集能力はその程度なのか。これでは、情報網を張り巡らせて官僚を監視し、支配するという強面のイメージが台無しになる。  そう考えると、やはり、先述したように、何の戦略もなく、問題になることなど予想もしなかったというのが本当のところではなかろうか。

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