新型コロナウイルス対策の「ソーシャルディスタンス」という目新しい言葉が飛び交う一年だった。一方で、お年寄りや障害、病気をもつ人を支える介護や医療の現場は相手に寄り添うケアが求められる。感染対策とのバランスの取り方に働く人たちは悩んでいた。
「耳の遠い方とお話しする際、顔を近づけて大きな声でしゃべっている」
「認知症の方がすぐにマスクを外してしまう。強要できない」
11月下旬、岐阜県飛驒市と高山市北部にある特別養護老人ホームや訪問介護、リハビリ、飛驒市などの関係者が集まる会合で、こんな悩みが聞かれた。介護現場と病院、行政をつなぐオンライン研修会「高原郷ケアネット」の一コマだ。
介護施設や病院は日々、感染対策に細心の注意を払っている。換気や職員の検温を徹底し、スタッフが感染した想定で、利用者へのケアをどうするかシミュレーションした施設もある。
「ウィズコロナと言われるが先が見えず、いつ終わりがくるかも分からない。ストレスがたまっている」
参加者の問いに対して、飛驒市民病院の中林玄一医師(47)が答えた言葉が心に残っている。
「いつまでに(感染が)収まるはずだと考えていると、その『いつ』がきても収まらなかった場合、心が折れます。感染を一つ一つ抑え込んでいくのが大切。みんなで乗り越えていけたらと思います」
介護を受ける人への影響を心配する声もある。
介護保険サービスの利用者の相談に応じるNPO法人「ぎふ福祉サービス利用者センター びーすけっと」(各務原市)は6月、認知症の人が共同生活をする「グループホーム」を調査した。コロナ禍の影響を尋ね、県内40市町村の200施設(利用者は計2926人)が回答した。
感染拡大前に比べて、利用者に変化があったとする施設は6割にのぼり、体力の衰え(28%)、認知症の悪化(19%)などを挙げた。施設のなかで感染者や濃厚接触者が出た場合に「介護が十分にできない」と心配していた施設も、8割近くあった。
NPO法人理事長で、中部学院大教授の飯尾良英さん(71)は「外出自粛やレクリエーションの中止が長引けば、利用者の楽しみがなくなる」と心配する。
さらに懸念されるのは、新型コロナの「第3波」に伴う医療の逼迫(ひっぱく)だという。
介護施設で感染が拡大して介護度が高い人が入院すると、受け入れる医療機関も多くの人手が必要になり、負担が大きい。
「介護施設をコロナからどう守るか、地域全体で考えていかないといけない」。飯尾さんの言葉を思い出しながら、年末年始も休まず現場で働く人たちへ思いをはせた。(高木文子)
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