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Wednesday, July 28, 2021

五輪開催がネック、減らぬ人出…東京3000人超、感染急拡大に専門家「危機的状況だ」 - 東京新聞

東京・渋谷駅前のスクランブル交差点をマスク姿で行き交う人たち

東京・渋谷駅前のスクランブル交差点をマスク姿で行き交う人たち

 

 新型コロナウイルス緊急事態宣言下でも新規感染者数の増加が止まらず、専門家から強い危機感を訴える声が相次いでいる。東京五輪開催が感染防止と「矛盾したメッセージ」になっており、人出の減少幅はこれまでよりも小さい。入院者や重症者数は徐々に増加。医療体制が逼迫しつつある。(上野実輝彦、沢田千秋、佐藤大、藤川大樹)

◆尾身会長「人流や接触機会、期待されるレベルにない」

 「人流や接触機会は宣言が出て徐々に減っているが、期待されるレベルには至っていない」。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は28日、衆院内閣委員会の閉会中審査で、そう指摘した。

 菅義偉首相は27日に、感染拡大でも五輪を中止しない理由に「人流も減っている」ことを挙げたが、尾身氏は減り方が十分ではないと警鐘を鳴らした。

 尾身氏は過去最多の1日当たり新規感染者数を更新する東京の医療体制について「逼迫が既に始まっている」とも語った。

 根拠は入院者や重症者、入院調整、宿泊・自宅療養者の拡大。50代を中心に高流量酸素を投与している重症一歩手前の患者の増加にも触れた。4回目の宣言が出た12日の入院者数は1947人、重症者は55人。28日にはそれぞれ2995人、80人に増えた。

◆「お祭り」のメッセージ

 28日の厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」の資料でも、人出の減り方の鈍さは明らかだ。宣言2週間後の東京の繁華街の人出は、前回宣言時は約40%減ったのに、今回は約16%しか減っていない。

 人出が大きく減らない理由について、専門家組織メンバーの太田圭洋・日本医療法人協会副会長は、宣言慣れに加えて五輪の存在を指摘する。「五輪をやることと感染拡大を防止しなければいけないという、少し矛盾したメッセージが出ていることも要因の一つだ」

 座長を務める脇田隆字・国立感染症研究所長も、宣言の一方で「五輪というか、お祭りが行われているメッセージも影響する可能性がある」と指摘する。

◆デルタ株の影響大

 今回の感染拡大速度は、専門家の見立てを上回っている。今月上旬の会合の資料では、宣言などの強い対策がない場合でも、東京の新規感染者数が3000人を超えるのは8月に入ってからと予測されていた。

 速さの要因の1つはデルタ株(インド株)の影響とみられている。デルタ株が持つL452R変異について、厚労省は感染力と入院リスクの高さに加え「ワクチンと抗体医薬の効果を弱める可能性」を指摘する。国立感染症研究所は、デルタ株が首都圏1都3県で感染者の75%を占めると推計。急速に置き換わりが進んだとみる。

◆「助かる命も助からない」

 脇田氏は28日の会合後、こう訴えた。「これまでにない急速な感染拡大。この危機感を行政と市民が共有できていないことが最大の問題。熱中症などで救急搬送が増加する中、一般医療への負荷も増し、通常であれば助かる命も助からない状況が始まりつつある」

 釜萢敏・日本医師会常任理事も厳しい見方を示した。「コロナ対策以外に五輪を含めやらなければならないことが多く、危険な状況について、幅広く政治家の理解が得られていない」

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 新型コロナウイルス緊急事態宣言下でも新規感染者数の増加が止まらず、専門家から強い危機感を訴える声が相次いでいる。東京五輪開催が感染防止と「矛盾したメッセージ」になっており、人出の減少幅はこれまでよりも小さい。入院者や重症者数は徐々に増加。医療体制が逼迫しつつある。(上野実輝彦、沢田千秋、佐藤大、藤川大樹)

◆尾身会長「人流や接触機会、期待されるレベルにない」

 「人流や接触機会は宣言が出て徐々に減っているが、期待されるレベルには至っていない」。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は28日、衆院内閣委員会の閉会中審査で、そう指摘した。

 菅義偉首相は27日に、感染拡大でも五輪を中止しない理由に「人流も減っている」ことを挙げたが、尾身氏は減り方が十分ではないと警鐘を鳴らした。

 尾身氏は過去最多の1日当たり新規感染者数を更新する東京の医療体制について「逼迫が既に始まっている」とも語った。

 根拠は入院者や重症者、入院調整、宿泊・自宅療養者の拡大。50代を中心に高流量酸素を投与している重症一歩手前の患者の増加にも触れた。4回目の宣言が出た12日の入院者数は1947人、重症者は55人。28日にはそれぞれ2995人、80人に増えた。

◆「お祭り」のメッセージ

 28日の厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」の資料でも、人出の減り方の鈍さは明らかだ。宣言2週間後の東京の繁華街の人出は、前回宣言時は約40%減ったのに、今回は約16%しか減っていない。

 人出が大きく減らない理由について、専門家組織メンバーの太田圭洋・日本医療法人協会副会長は、宣言慣れに加えて五輪の存在を指摘する。「五輪をやることと感染拡大を防止しなければいけないという、少し矛盾したメッセージが出ていることも要因の一つだ」

 座長を務める脇田隆字・国立感染症研究所長も、宣言の一方で「五輪というか、お祭りが行われているメッセージも影響する可能性がある」と指摘する。

◆デルタ株の影響大

 今回の感染拡大速度は、専門家の見立てを上回っている。今月上旬の会合の資料では、宣言などの強い対策がない場合でも、東京の新規感染者数が3000人を超えるのは8月に入ってからと予測されていた。

 速さの要因の1つはデルタ株(インド株)の影響とみられている。デルタ株が持つL452R変異について、厚労省は感染力と入院リスクの高さに加え「ワクチンと抗体医薬の効果を弱める可能性」を指摘する。国立感染症研究所は、デルタ株が首都圏1都3県で感染者の75%を占めると推計。急速に置き換わりが進んだとみる。

◆「助かる命も助からない」

 脇田氏は28日の会合後、こう訴えた。「これまでにない急速な感染拡大。この危機感を行政と市民が共有できていないことが最大の問題。熱中症などで救急搬送が増加する中、一般医療への負荷も増し、通常であれば助かる命も助からない状況が始まりつつある」

 釜萢敏・日本医師会常任理事も厳しい見方を示した。「コロナ対策以外に五輪を含めやらなければならないことが多く、危険な状況について、幅広く政治家の理解が得られていない」

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