総括
9月末のドル買い終わり、10月初旬はドル安(除くドル円)スタート。成長低下、貿易赤字、債務問題、対中関係などと不安あり
ドル円=110-115、ユーロ円127-132 、ユーロドル=1.13-1.18
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨11位(11位)、株価13位(10位)、10月初旬は概ねドル安だが、ドル円だけが上昇。日本の矛盾が露出?」
9月期末はドル買いのデータ通りドル円は上昇した。10月初旬のドルは概ね下落したが、対円では上昇した。秋は季節的に実需で円売りが強まるが、日本の貿易収支で再び輸入が増え始め貿易収支が均衡し始めていることもある。ワクチンの輸入も増加した。外貨投信も月1兆円ペースで残高が増えている。残念なのは日経平均の大幅下落だ。海外勢も売っていれば円売りに繋がる。緊急事態宣言も解除され、岸田新政権はめでたく始まると思ったが、株価は急落している。海外の株価も中国恒大債務問題や米国の財政の崖問題で下落したが、その中でも日経の下げが際立っている。10月は上海・香港株や米株が上昇しているのに、日経だけが4.77%安となっている。中国・米国ショックというより日本ショックのようだ。
気になるのは岸田首相のホームページの「令和の所得倍増計画」が消えてしまっていることだ。さらに財務次官や自民党内部から増税の話が出ている。首相の公約喪失と増税論が株価に影響している。昨日、岸田首相は「金融所得増税論」を打ち消したが、政府・与党内で異論がある。連立与党の現金支給論も財務次官が打ち消している。新政権がスムーズに動いていない印象、改革せずに増税だけ求める財務省では株価も下がり、首相のリーダーシップが問われることとなろう。ただ幸いなのは、以前だと株下げ円高のリスク回避となったが、最近は素直に悪材料で円売りとなっていることだ。
*米「ドル通貨3位(3位)、株価(NYダウ)3位(6位)、9月末のドル買い終わり、10月初旬はドル安(除くドル円)スタート。成長低下、貿易赤字、債務問題、対中関係などと不安あり」
ドルはデータ通り、9月期末はほぼ全面高(最強は人民元)となった。ドル高は続かず10月初旬のドルはドル円では上昇しているが、全体的には弱い。12通貨中8位でユーロと同じ位置にいる。先週の経済指標は8月製造業受注、9月総合PMI、ISM非製造業、ADP雇用統計、失業保険などは強かったが、注目の9月非農業部門雇用者数は予想を下回った。ただインフレ率、賃金上昇率、労働力不足の問題などを考慮し、11月にテーパリングを開始する見方が多い。米金利も上昇している。米金利が上昇すると米株価が下がり、ドル(除く対円)も売られている。
需給面では8月の貿易収支は、赤字額が前月比4.2%増の733億ドルと、過去最高となった。企業が在庫を補充するために輸入が増えた。3Qの経済成長が減速したことを示す最新の兆候だ。アトランタ地区連銀は、3Qの国内総生産(GDP)成長率が年率2.3%に抑制されると予測。2Qは6.7%だった。
財政の崖では、米議会民主党が米国債のデフォルトリスクをひとまず避けるため、政府の債務上限を12月まで延長する野党・共和党の提案を受け入れた。12月3日まで政府資金を賄える分に当たる4800億ドル)だけ債務上限を引き上げる。問題を約2カ月先送りしただけで、民主党政権の苦境が続く。
その他台湾海峡問題の緊迫も米国が深く関わっていることもあり、金融市場を揺るがすだろう。
*ユーロ「通貨10位(9位)、株価6位(5位)DAX)、下げ止まるも他通貨程の勢いなし」
下げ止まっているが、10月はドル円を除く他の主要通貨がドル安推移しているが勢いがない。資源価格上昇の恩恵を受けにくい地域だからだ。インフレが高まっているが、ECBは一過性としていることや、経済指標に力強さが欠けていることがある。ラガルド総裁は、尚早な金融引き締めはユーロ圏の景気回復を損なう恐れがあると語った。ECBはインフレ期待が2%で安定するように賃金動向を注視しているとも述べた。総裁は消費者物価を押し上げている幾つかの要因の影響は薄れるだろうし、他の幾つかはECBのコントロールの外にあると指摘。「そういう理由から、今は過剰反応すべきではない」と主張した。「現時点での尚早な金融政策引き締めは、ユーロ圏の景気回復と雇用に悪影響を及ぼす恐れがある」と話した。
8月ユーロ圏小売売上高は前月比0.3%増・前年比横ばいで予想下回った。独8月鉱工業受注指数は前月比7.7%減で予想以上の大幅低下、ユーロ圏9月総合PMI改定値は56.2に低下となった。独の連立政権樹立交渉も速やかに進んだ方がいいだろう。
*ポンド「通貨4位(4位)、株価9位(7位)、年内利上げ説と強気のジョンソン首相でポンド上昇」
ポンドは底堅い。株価も中国恒大問題、米国の財政の崖問題がありながら10月はここまでプラス圏で推移している。中銀は年末時点のインフレ率が4%を超え、目標の2%を大きく上回るとの見通しを示した。
ベイリー中銀総裁は、利上げの根拠が強まっていると述べた。11月の利上げ可能性もある。首相も市場を盛り上げた。何事にも過剰に楽観的な見方を示すことで有名なジョンソン首相は「英経済の長期構造要因による弱さ」を終わらせると主張した。政府の地域格差解消の取り組みへの支援を聴衆に求めた。英国が現在直面する燃料や食料品供給の危機や、人手不足などによる産業界の窮地については「英経済復活」に向かう過程での一コマでしかないと片付けた。英国が移民を無制限に受け入れて低賃金を維持する従来のやり方では経済の成長と復活は達成できないと持論を繰り返した。「技能のある人々」のみを呼び寄せる移民管理制度の有効性を主張した。
ただ中銀は警告も発した。英中銀は投資銀行の間でリスク選好を強める兆しがあるが、投資家が新型コロナウイルス禍からの回復見通しを見直せば、歴史的高値となっている金融資産は急激に調整する可能性があると警告した。多くの金融市場では歴史的水準と比べてリスクテイクが強まっている証拠があると指摘。「例えば、市場参加者が成長やインフレ、金利見通しを再評価すれば、資産のバリュエーションは急激に調整される可能性がある」とした。
*豪ドル「通貨9位(10位)、株価5位(4位)、LNGと石炭価格上昇が豪ドルを持ち上げた。関係悪化の中国向けも大幅増」
持ち直し通貨番付でもユーロを抜いて9位に浮上した。政策金利は過去最低の0.10%に据え置かれた。住宅市場の過熱に対する懸念が高まっているが、中銀は長期間にわたり低金利を維持する意向を示唆した。債券買い入れの規模も週40億豪ドルで据え置いた。コロナウイルス感染対策のロックダウンが敷かれる中、3Qは景気縮小が必至とみられており、景気支援継続の必要性が浮き彫りになっている。ただ、ワクチン接種率の上昇に伴い行動制限が近く緩和されることから、中銀は速いペースでの景気回復を期待している。ロウ総裁は声明で「ワクチン接種率がさらに上昇し、制限が緩和されるに伴い、経済の持ち直しが見込まれる」と指摘。「中銀の連絡先企業や求人データは、10月、11月の経済再開を前に多くの企業が採用を模索していることを示唆している」と述べた。一方、数年にわたり低金利が維持されるとの見通しは住宅価格の高騰を招いており、住宅購入能力や家計債務を巡る懸念につながっている。
豪ドルを引き上げたのは、LNG価格の上昇だろう。8月の貿易収支は、黒字が予想外に拡大して過去最高となった。鉄鉱石価格が下落した一方、LNGや石炭の輸出が好調だった。
貿易黒字は151億豪ドルで、7月の127億豪ドルから拡大した。輸出は前月比4.1%増の485億豪ドル。アジアの強いエネルギー需要を背景に、LNG、原料炭、一般炭が輸出の伸びを主導。価格、数量ともに好調で、鉄鉱石価格の大幅下落の影響を相殺した。アジアのエネルギー需要は、中国で電力不足が深刻化し、各国が冬を前にLNGや石炭の確保に動く中、いっそう拡大している。8月の輸出は中国向けだけで前年同月比55%増の186億豪ドルと、両国間の政治・通商面の緊張による影響はほとんど見られていない。
*NZドル「通貨6位(7位)、株価14位(14位)、予想通りの利上げ後も大きく伸びず。企業信頼感が弱かった
予想通り政策金利は0.25%引き上げられ0.5%となった。ただ大きくは上昇しなかった。3Qの企業信頼感は2Qから悪化したからだ。直近の新型コロナウイルス感染拡大を受けたロックダウン措置がセンチメントを圧迫した。業況全般が「良くなる」と回答した企業の割合から「悪化する」と回答した企業の割合を引いた値はマイナス11%で、2Qのプラス7%から悪化した。一方、設備稼働率は96.1%で、2Qの94.9%から上昇した。需要は持ち直しているものの、新型コロナの市中感染の広がりが企業の業況感に影響を及ぼしている。
さて利上げは2014年7月以来7年3カ月ぶり。中銀は「低いインフレ率を維持すると同時に最大限の持続可能な雇用を支えるためには、金融刺激の水準縮小を続けることが適切」との認識を示し、追加の緩和縮小を示唆した。原油高と供給不足、輸送コスト上昇に伴い国内ではコスト圧力が短期的に際立っており、その結果として、消費者物価指数上昇率は、中期的に目標レンジの中間値2%に向け収れんする前に目先4%を上回ると予測した。3Qの消費者物価は10月18日に発表される。予想は前年比で3.6%上昇だ。
テクニカル分析
*ドル円「再びボリバン2σ上限へ」
日足、10月1日-4日の上昇ラインを上抜き上昇、ボリバン2σ上限に近づく。10月7日-8日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。2σ上限は112.474(10月8日)
週足、9月27日週は長い上ヒゲを残したが先週はそれを上回りボリバン3σ上限へ。9月27日週-10月4日週の上昇ラインがサポート。雲の上。
月足、7月-8月の下降ラインを上抜く。21年8月-9月の上昇ラインがサポート。雲の上へ。ボリバン上位。18年10月-21年9月の下降ラインを上抜く。
年足、2020年まで5年連続年足陰線だが、今年はここまで陽線維持。15年-20年の下降ラインを上抜く。16-20年の上昇ラインがサポート。
*ユーロドル「ボリバン下位で推移。10月4日-8日の下降ラインが上値抵抗」
日足、ボリバン2σ下限に沿いながら下落。10月4日-8日の下降ラインが上値抵抗。10月6日-8日の上昇ラインがサポート。5日線下向き。
週足、ボリバン2σ下限へ下落、雲中。9月27日週-10月4日週の下降ラインが上値抵抗。2σ下限は1.1521。
月足、21年4月-6月の上昇ラインを下抜ける。6月-9月の下降ラインが上値抵抗。サポーは雲上限。ボリバン中位を下抜く。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。17年‐20年の上昇ラインがサポート。14年‐20年の下降ラインも上抜いたが下抜き返す。
*ユーロ円「ボリバン中位越え持ち直す」
日足、先週末に急騰。ボリバン中位越え持ち直す。9月29日-10月8日の下降ラインが上値抵抗。10月7日-8日の上昇ラインがサポート。5日線上向く。雲中へ。ボリバン上位。
週足、雲の上に留まる。9月20日週-10月4日週の上昇ラインがサポート。9月6日週-27日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、4か月連続陰線。今月は陽線スタート。20年11月-21年9月の上昇ラインがサポート。21年7月-9月の下降ラインが上値抵抗。雲の上。
年足、18年-19年の下降ラインを上抜く。16年-20年の上昇ラインがサポート。15年-18年の下降ラインも上抜く。
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたしま す。また、本レポートに記載された意見や予測等は、今後予告なしに変更されることがございます。 なお、本レポートにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、FX湘南投資グループグならびに株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。
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