*09:21JST コラム【新潮流2.0】:意外に早い終わり(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)
◆8月である。やっと8月だ。今年、関東甲信は記録的に早い梅雨明けとなり、堪えがたい猛暑がもう1ヶ月以上も続いている。8月だが、まだ8月である。この暑さもまだまだ先が長いと思うとげんなりする。
◆こう暑いと犬の散歩は陽が昇る前の早朝か、完全に陽がかげってからの夕方でないといけない。こんなことを書くと驚かれるかもしれないが、最近の散歩で、早朝の空気に、夕闇の中の風に、一筋の涼を感じることがあった。これは例年であれば、8月後半、甲子園で高校野球が終わる頃のことである。
◆そういえば、蝉ファイナル(死んでいると思った蝉が突然、飛び跳ねて驚くこと)にこの時期から遭遇することが増えた。昨日は川辺で赤とんぼが飛んでいるのを見た。自然界は帳尻が合うようにできているのだろう。今年は夏が早く始まった分、終わりも早いのかもしれない。素人の天気予報だから当てにはならないが、今年の暑さもお盆過ぎには落ち着くのではないか。
◆異例のペースでヒートアップしてきたが、案外、終わりも早いのではないか。この夏の暑さの話ではない。米国FRBの利上げである。こちらは、早く始まったから終わりも早い、というのではない。利上げ開始が後手に回った分、利上げ幅を通常より大きなものにしてようやく中立金利に達した。いわば大急ぎで帳尻を合わせたということである。この先、利上げの終わりはまだ見えない。しかし、気の早い市場はすでに利下げまで織り込み始めた。いくらなんでも早過ぎるだろう。
◆ここから先はパウエル議長が強調するようにデータ次第なのだ。市場の利下げ期待はリセッションの兆しに基づくものだが、それは蝉ファイナルや川辺の赤とんぼより薄い根拠である。市場の勝手な思惑よりも長年にわたり観察された自然のサイクルのほうが信頼できる。8月である。この週末には暦の上では秋が立つ。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:8/1配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)
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