モノとモノの関係、描いた部分と描かない部分の共振――。従来の西洋美術の枠を超える問いを続ける美術家の李禹煥(リウファン)さん(86)が、自ら企画を練った大回顧展を東京の国立新美術館で開催中だ。国際的に評価される「もの派」の代表的存在の李さんは、しかし「絶えず未完成」と話すのだ。
展示室に入ってほどなく、2メートル四方ほどのガラス板に大きな石による亀裂を走らせた「関係項」シリーズの1作と出あう。
1968年の初期作を再制作したもので、唐十郎さんの演劇もヒントになったという。
李さんは、「表現に対する一種の拒否、暴力、反発です。従来の社会体制への抵抗の時代でしたが、直接的に政治現象を表現するのは好きではなかった」と振り返りつつ、「今回、この否定性が自分の出発点で、そこから新たな次元を探ろうとしてきたことが確認できてよかった」と話した。
36年に韓国で生まれ、ソウル大学校美術大学在学中の56年、横浜に住む叔父に薬を届けるために短期間のつもりで来日した。
しかし帰国しないまま日本で哲学を学び、60年代後半から創作を本格化。72年には単色の点や線の反復をさせる絵画も始め、時間性を表現した。
木や石、鉄などをほぼ手つかずのまま配するような、李さんらの「もの派」と呼ばれる表現は60年代末に登場。当初はなかなか理解されず、「コテンパンにやられた」。
反論したかったが、ある美術評論家からは「苦しいだろうが、簡単な話ではないから、あなたは我慢して作品に専念を」と言われたという。回顧展の事前会見でも、「大変厳しい、つらい道だったことは間違いありません」と明かした。
「日本では侵入者のように言われ、韓国では逃亡者のように見られた」
こうして、李さんは欧米に出…
からの記事と詳細 ( 理解されずコテンパンにやられた 李禹煥さんの終わりなき制作の道:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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