ウクライナ戦争を止めるためにはウクライナへの武器支援を強化し、ロシアを追い込まないといけない、という議論をする人は多い。しかし、ロシアとの協議の場を設定し和平に向けて道筋を描くべきだと主張する人は少ない。
ロシアが簡単に敗北するとも考えられず、戦争が続く限り民間犠牲者の数は増え続け、対ロシア制裁も強化されこそすれ、解除されることはない。エネルギーや食糧価格は上昇圧力が強く、世界経済も平時に戻ることはない。
これで中国がロシアに軍事支援を始め、中露連携が明確になり、対露だけでなく対中制裁といったことになれば、中露を中心にいわゆる「グローバルサウス」と先進民主主義国との分断は決定的となり、世界の構造が変わる。
防衛費拡大に一直線の日本
翻って日本を見れば、ロシアのウクライナへの侵攻が始まって以降、「今日のウクライナは明日の台湾」を叫び、防衛費の飛躍的拡大に向かった。
その間、日本の安全保障のあり方に関する真剣な議論なきまま、「国を守る覚悟」といった精神論をかざし軍備拡大に走る。
これまで低姿勢を保っていた自衛隊幹部など防衛関係者はここぞとばかりに、「ウクライナになりたくなければ防衛予算の飛躍的拡大を」と訴える。
理解しがたいのは「台湾有事」がすぐそこにあるかのようにあおりたてる右派政治家並びに大手メディアの存在だ。台湾有事になれば日本の犠牲が大きいことが公表されると、彼らは途端に黙り込む。
もちろん有事の備えは必要だが、日本が台湾有事の備えを作ったところで台湾有事を防げるものではない。それに台湾の人々が望むのは有事ではなく、間違いなく現状の維持なのだ。
防衛費で調達された武器は、日本への攻撃を抑止するためといわれる。膨大な武器の調達は米国には大いに裨益(ひえき)するだろうが、調達されたミサイルは演習で使われることはあっても実戦に使われることはあってはならない。
それは戦争を意味するからだ。…
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