Pages

Sunday, May 21, 2023

「安いニッポン」の終わりか 変わる日本の賃金 - 日本経済新聞

30年以上にわたって賃金が伸び悩んできた「安いニッポン」が転機を迎えている。女性やシニアの労働参加が頭打ちになり、アジアとの経済格差の縮小は外国人労働力の供給を細らせる。あらゆる産業で労働需要が供給を上回る絶対的な人手不足が到来し、働き手優位の状況は賃上げ圧力を強めている。関連記事をまとめた。

「安いニッポン」に転機 時給2000円でも働き手来ず

2023年春季労使交渉では大幅な賃上げでの妥結が目立った。自動車など製造業で相次ぐ満額回答が目を引くなかで、「隠れた主役」が新型コロナウイルス禍からの経済正常化の途上にある飲食・サービス業だった。物価高に加え、新たなステージに進みつつある人手不足が背景だ。

消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)に占めるサービス価格の割合は約5割。原材料価格の変動を受けやすい食品などの財に比べ、人件費の割合が大きいサービス価格の上昇は欧米に比べて鈍かった。短期的には景気変動の影響を受ける可能性はあるが、長期的には雇用のトレンドは変わらない。リクルートは3月、2040年に約1100万人の労働力が不足すると予測した。賃上げが物価を押し上げる未来も見えてきた。

賃上げドミノ、横並び変える 待遇改善、老いも若きも

日本経済新聞が実施した採用計画調査では2023年4月入社の大卒初任給は前年比2.2%増。22年入社を1.6ポイント上回り、10年以降で過去最高となる増加率だ。背景には新卒採用で売り手市場の傾向が一段と強まっていることがある。少子化もあって大卒求人倍率の上昇基調は長期的に続く。

賃上げの波は新卒だけでなく、これまで春季労使交渉の対象外だった、管理職やシニア人材にも広がる。老いも若きも賃上げが始まった23年。企業の賃上げ競争の号砲は鳴らされたばかりだ。

「雇い負け」現実に 人材獲得、陰る国際競争力

国内で働く外国人労働者は2022年に182万2725人と、就業者数の3%に達した。製造業から小売り、サービスまで、外国人の働き手なしで現場は立ちゆかなくなっている。ただ、賃金上昇が遅れてきた日本の「職場」としての魅力は乏しくなりつつある。

日本だけでなく、世界も人手不足に陥っている。米マンパワーグループが3月にまとめた23年の人材不足調査。日本を含む世界41カ国・地域の雇用主に聞いたところ、世界平均の「人手不足感」は77%。06年の調査開始時点から37ポイント増え過去最高だ。各国は優秀な人材を確保するため賃上げ競争に走る。

アバターもロボも働き手 生産性向上へ総力戦

働き手が不足する社会では一人一人のパフォーマンスを高めることが不可欠だ。2021年の日本の1人当たり労働生産性は約8万1500ドルと、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中29位に沈み、1970年以降で順位は最低だ。

30年に644万人の労働力不足を予測するパーソル総合研究所は、4.2%の生産性向上で298万人分の労働力不足を補えると試算する。人材教育や設備投資を通じた自動化の推進などが生産性向上の柱だ。人や設備への投資を抑える従来のコスト削減型経営の限界に気付いた企業は動き始めた。

日本の賃金 強まる上昇圧力 経営者・識者に聞く

少子高齢化や人材獲得の国際競争力の陰りなど、日本で人材を確保する難易度は増している。このまま、人手不足は日本の賃金への上昇圧力を強めていくのか。ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長など経営者や識者に、企業や社会が取るべき対応策や賃金の今後の見通しなどについて聞いた。

【関連記事】

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 「安いニッポン」の終わりか 変わる日本の賃金 - 日本経済新聞 )
https://ift.tt/DoESMam

No comments:

Post a Comment