まさかの初戦敗戦から、逆転突破を目指して大量点での勝利を狙ったのは鹿島アントラーズユース。一方、チャレンジャーとして“自分たちらしさ”を表現することにこだわった初出場・いわきFC U-18。第47回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は24日、群馬県内各地でグループリーグ2日目を開催。前橋総合運動公園 群馬電工陸上競技・サッカー場で行われたグループCの鹿島ユースといわきU-18の対戦は、「負けたら終わり」(柳澤敦監督)の背水の陣を敷いた鹿島の圧勝に終わった。
共に初戦黒星スタートという苦しい結果になった両チームの対戦。そして、だからこそアグレッシブに行くことを強調して試合に入った点も共通していた。初戦4失点の大敗となった、いわきの新井健太監督はこう語る。
「初めての全国大会で初戦は自分たちのプレーを出せませんでした。結果はもちろん大事ですが、まず大事なのは思いきりチャレンジして、自分たちがやってきたことを出すということ。トップチーム同様、前からボールを奪いに行くのが自分たちのスタイル。失点するリスクはあるかもしれないけれど、そこにチャレンジしようという話をして試合に入りました」
実際、序盤からいわきの意図するプレーが出るシーンはあり、鹿島に簡単にやらせはしない。セットプレーを含めて鹿島のチャンスは複数あったが、GK近藤嵩悟(2年)のビッグセーブもあり、体を張って守る姿勢も見せて簡単に先制ゴールを奪わせはしなかった。
ただ、鹿島にとっても譲れない試合だった。「今日からトーナメントのつもりで戦う」(柳澤監督)という意識で試合に入ったチームは、なかなか点を取れない流れの中でも愚直にやるべきサッカーを徹底。「マンツーマン気味に付いてくる」(柳澤監督)いわきの守備を個でも破りつつ、ゴールに迫り続けた。
それがついに実ったのが前半28分。MF平山京吾(3年)のCKを、DF登録ながらFWに入っている大山幸路(3年)が「自分の得意なプレー」と胸を張ったとおりの力強いヘディングで合わせ、先制点を奪い取る。さらに33分には、攻撃参加とキックに定評のあるDF佐藤海宏(2年)のクロスから再び大山が頭で合わせ、2点のリードを奪い取った。
後半も試合の構図としては大きく変わらない。いわきが選んだのは「失点しないようにするのではなく、前からチャレンジする」(新井監督)こと。MF高木英孝(3年)を軸に折れない姿勢を貫いて、何とか1点をもぎ取ろうと「本当に強いチームだと改めて感じさせられた」(新井監督)鹿島に対抗し続ける。
対する鹿島は得失点差勝負となる展開も見据え、初戦の京都U-18を上回る5点差勝利を一つの目安としてゴールに迫り続けた。そこでもう一人の主役になったのは、負傷から復帰してきたU-17日本代表候補の大型FW徳田誉(2年)。ハーフタイムから投入されると、後半29分についにゴールを奪う。左サイドを見事に崩す流れからMF壱岐健斗(3年)のアシストを受けてのワンタッチシュートで3-0。さらにアディショナルタイムには、試合途中からポジションを上げたU-17日本代表DF松本遥翔(2年)、さらに徳田の2点目も飛び出して、5-0の快勝となった。
「みんなの気持ちを感じるゲームだった」と柳澤監督が評したように、気温38.8℃の環境の中で最後まで足を止めずにゴールを狙い続ける鹿島の姿勢が実っての圧勝。得失点差で優位に立った上で最終節を迎えることに成功した。
一方、敗れたいわきも果敢に前線へのランニングを試みるプレーや、前から奪いにいく姿勢などチームとしてのスタイルを表現。確かな印象を残した。「全国大会での1試合は、何試合分もの経験値になる」と実感したと言う新井監督にとって、「結果は悔しいですけど、選手の成長に繋がる経験ができている」という感触もある大会となっているようだ。最後の一戦に向けて「リスクを恐れることなくチャレンジして、勝利を目指したい」とあらためて意気込んだ。
(取材・文 川端暁彦)
●【特設】第47回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会
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