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Thursday, August 26, 2021

池袋暴走 松永さん「1審で終わりに」「恨み続けることはつらい」 - 毎日新聞 - 毎日新聞

真菜さんと莉子ちゃんと暮らした部屋でインタビューに答える松永拓也さん。部屋には莉子ちゃんのおままごとセットが残る=東京都豊島区で2021年8月7日、小川昌宏撮影 拡大
真菜さんと莉子ちゃんと暮らした部屋でインタビューに答える松永拓也さん。部屋には莉子ちゃんのおままごとセットが残る=東京都豊島区で2021年8月7日、小川昌宏撮影

 東京・池袋で2019年4月に起きた乗用車の暴走事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(90)に9月2日、判決が言い渡される。事故で妻真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)を失った松永拓也さん(35)が取材に応じ、現在の心境を語った。主なやり取りは以下の通り。【聞き手・柿崎誠】

五輪を一緒に見たかった

 ――東京オリンピックが開催中ですね(※取材は8月7日)。

 ◆東京オリンピックの開催が決まった時、真菜と「見に行きたいね」と話していました。競技を見ていると、そのことを思い出します。一緒に見たかったな。

 ――判決を控え、どんな思いで過ごしていますか。

 ◆裁判官が正しい判断をしてくれると信じています。法律の枠組みの中で厳罰であってほしいと思いますが、どんな判決内容でも、現実は何も変わらないので、期待や不安はありません。有罪判決によって2人の命が戻ってくるなら、すごく期待しますが……。

裁判を続ける意味考え

 ――8月5日にブログを更新し、被告に「1審の判決が出たら、もうやめにしませんか」と呼び掛けました。

 ◆裁判の中で私のブログを見ていると話していたので、被告に私の今の思いが届くのではないかと考え、初めてブログで被告の名前を書きました。法律上、無罪を主張する権利があることや日本の裁判制度は理解し、尊重しています。被告の心や行動はコントロールできないし、強制するつもりもありません。被告が故意に命を奪ったとも思っていません。決して怒りを込めたものでなく、私の願いです。

 ――なぜそのような呼び掛けをしたのですか。

真菜さんと莉子ちゃんと暮らした部屋でインタビューに答える松永拓也さん。部屋には莉子ちゃんのおままごとセットが残る=東京都豊島区で2021年8月7日、小川昌宏撮影 拡大
真菜さんと莉子ちゃんと暮らした部屋でインタビューに答える松永拓也さん。部屋には莉子ちゃんのおままごとセットが残る=東京都豊島区で2021年8月7日、小川昌宏撮影

 ◆厳罰を求める考えや刑務所で罪を償ってほしいという気持ちは持ち続けていますが、裁判を続ける中で、誰も幸せにならないのではないかというモヤモヤした気持ちがずっとありました。2人の命が戻ってくるわけではなく、どんな判決が出ても救われません。裁判が続く限り、真菜や莉子が望んでいたような、他者への愛にあふれた自分になることはできません。被告自身や被告の家族も幸せになれるのかを考えると、裁判を続ける意味があるのかと思うようになりました。

人を恨み続けるのはつらい

 ――ブログでも被告の家族を気遣う記述がありました。

 ◆被告は裁判で「車のせい」にしていましたが、車の記録装置などから車に不具合はないという客観的証拠が明らかになりました。それでも無罪を主張することは、私たちはもちろん、被告の家族にも相当な苦しみを与えたのではないかと思います。

真菜さんと莉子ちゃんと暮らした部屋でインタビューに答える松永拓也さん。部屋には莉子ちゃんのおままごとセットが残る=東京都豊島区で2021年8月7日、小川昌宏撮影 拡大
真菜さんと莉子ちゃんと暮らした部屋でインタビューに答える松永拓也さん。部屋には莉子ちゃんのおままごとセットが残る=東京都豊島区で2021年8月7日、小川昌宏撮影

 ――判決後、被告のどのような態度の変化を期待しますか。

 ◆被告は長年、日本の技術発展のために多大な功績を残された人です。だからこそ、争いの感情をばらまき続けるのではなく、社会のためになることをしてほしいです。自分自身がしたことを受け入れ、心からの謝罪をしてくれたら、私も前を向いて生きていけます。人を恨み続けることはつらいので、1審で終わりにしたい。争いのためではなく、交通事故をなくすための活動にエネルギーを向けたいです。

 ――「関東交通犯罪遺族の会」(あいの会)に参加し、事故防止に向けて国などへの要望活動を続け、ブログなどで積極的に発信しています。

 ◆SNS(ネット交流サービス)で私への中傷メッセージが届くことも多くなり、発信すればするほど怖くなることもあります。でも、2人の命を無駄にしないという思いで、活動を続けています。私の生きる力になっています。全ての人に一気に伝えることはできませんが、少しずつ種まきのように活動を続けていきたいです。

池袋暴走事故

 2019年4月19日午後0時25分ごろ、東京都豊島区東池袋4の都道で、旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三被告が運転する乗用車が暴走して交差点に進入し、自転車で横断歩道を渡っていた松永真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)がはねられて死亡したほか、9人が重軽傷を負った。制限速度は時速50キロだったが、約96キロのスピードが出ていた。公判では、車の記録装置にブレーキが踏み込まれた記録はなかったとされたが、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われた飯塚被告は「ブレーキとアクセルは踏み間違えていない」などと無罪を主張した。検察側は「反省の情がない」として法定刑の上限にあたる禁錮7年を求刑している。

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