29日、岸田文雄首相が新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」対策に先手を打った。全世界を対象に、外国人の新規入国を禁止する。「第5波」のデルタ株と同じく、オミクロン株を「懸念される変異株」に指定して翌日のスピード決定。対コロナで「後手」批判を招き、急速に退潮していった菅義偉前政権の二の舞いを避けたい、との首相の思いが色濃くにじむ。 「つまらないプリンス」が会見で見せた「らしくない」顔
ためらうそぶり見せず急旋回
「未知のリスクには、慎重の上にも慎重に対応すべきと考えて政権運営を行っている。『まだ状況が分からないのに、岸田は慎重すぎる』という批判については、私が全て負う覚悟でやってまいる-」 午後、オミクロン株の国内侵入をできる限り食い止める水際対策強化を表明した首相は、記者団を見据えこう力を込めた。デルタ株より感染力が強い可能性が指摘され、ワクチンの有効性も不明という不気味なオミクロン株。陽性者は南アフリカから欧州、香港、オーストラリアなどに急拡散しつつあり、世界保健機関(WHO)は早くから警告を発す。日本のコロナ「第6波」を出来(しゅったい)させかねない重大なリスク要因だ。 26日に報告を受けた首相は、27日に南アフリカなど6カ国を、28日からはアフリカの3カ国を対象に追加し、外国人の新規入国を認めないなどの防疫措置を取った。そして29日、その「バリアー」を「先進7カ国(G7)で最も厳しい水準」(外務省)まで一気に引き上げた。 国内の感染状況が静まり、社会経済活動は順次再開され、今月8日には短期のビジネス目的の新規入国者に関する規制を緩和したばかりのタイミング。文字通りの急旋回に、経済界や霞が関からは「『まだ、そこまでやらなくてもいいのでは』との進言が寄せられた」(政府関係者)ものの、首相はためらうそぶりを見せなかった。
前任者に見いだした苦い教訓
「菅さんみたいにはなりたくない」 10月に就任して以降、首相は1年で政権を畳まざるを得なかった前任者に見いだした苦い教訓を、たびたび周囲に漏らしてきたという。デルタ株の対処で後手に回り、無観客で開催した東京五輪期間中の8月上旬には都内の感染者数が5千人を突破。列島を覆った第5波は医療提供体制を危機の淵に押しやり、菅政権の体力を削った。 今回は、岸田政権の対コロナ「初動」となる。29日、自民党の合同部会を開いた佐藤正久・党外交部会長は「これまでと比べると、早め早めに対応している」。その上で、五輪・パラリンピックなどを念頭に「(第5波の)前回、特段の事情によって水際対策が非常に形骸化したのではないかと多くの国民が思っている。(措置の)さらなる厳格化については、しっかり詰めていきたい」と話し、与党として首相の背中を押してみせた。 実際に、情勢は予断を許さない。ナミビアから到着した入国者1人の陽性が確認され、現在、オミクロン株かどうかを日本の国立感染症研究所が解析している。未知の変異株の脅威が現実のものとして立ち現れる前に、もう一度、マスク着用や手洗いの励行、「密」回避といった感染防止策の徹底を国民に得心してもらえるか。首相に、最初の正念場が訪れた。 (前田倫之、久知邦)
29日、岸田文雄首相が新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」対策に先手を打った。全世界を対象に、外国人の新規入国を禁止する。「第5波」のデルタ株と同じく、オミクロン株を「懸念される変異株」に指定して翌日のスピード決定。対コロナで「後手」批判を招き、急速に退潮していった菅義偉前政権の二の舞いを避けたい、との首相の思いが色濃くにじむ。 「つまらないプリンス」が会見で見せた「らしくない」顔
ためらうそぶり見せず急旋回
「未知のリスクには、慎重の上にも慎重に対応すべきと考えて政権運営を行っている。『まだ状況が分からないのに、岸田は慎重すぎる』という批判については、私が全て負う覚悟でやってまいる-」 午後、オミクロン株の国内侵入をできる限り食い止める水際対策強化を表明した首相は、記者団を見据えこう力を込めた。デルタ株より感染力が強い可能性が指摘され、ワクチンの有効性も不明という不気味なオミクロン株。陽性者は南アフリカから欧州、香港、オーストラリアなどに急拡散しつつあり、世界保健機関(WHO)は早くから警告を発す。日本のコロナ「第6波」を出来(しゅったい)させかねない重大なリスク要因だ。 26日に報告を受けた首相は、27日に南アフリカなど6カ国を、28日からはアフリカの3カ国を対象に追加し、外国人の新規入国を認めないなどの防疫措置を取った。そして29日、その「バリアー」を「先進7カ国(G7)で最も厳しい水準」(外務省)まで一気に引き上げた。 国内の感染状況が静まり、社会経済活動は順次再開され、今月8日には短期のビジネス目的の新規入国者に関する規制を緩和したばかりのタイミング。文字通りの急旋回に、経済界や霞が関からは「『まだ、そこまでやらなくてもいいのでは』との進言が寄せられた」(政府関係者)ものの、首相はためらうそぶりを見せなかった。
前任者に見いだした苦い教訓
「菅さんみたいにはなりたくない」 10月に就任して以降、首相は1年で政権を畳まざるを得なかった前任者に見いだした苦い教訓を、たびたび周囲に漏らしてきたという。デルタ株の対処で後手に回り、無観客で開催した東京五輪期間中の8月上旬には都内の感染者数が5千人を突破。列島を覆った第5波は医療提供体制を危機の淵に押しやり、菅政権の体力を削った。 今回は、岸田政権の対コロナ「初動」となる。29日、自民党の合同部会を開いた佐藤正久・党外交部会長は「これまでと比べると、早め早めに対応している」。その上で、五輪・パラリンピックなどを念頭に「(第5波の)前回、特段の事情によって水際対策が非常に形骸化したのではないかと多くの国民が思っている。(措置の)さらなる厳格化については、しっかり詰めていきたい」と話し、与党として首相の背中を押してみせた。 実際に、情勢は予断を許さない。ナミビアから到着した入国者1人の陽性が確認され、現在、オミクロン株かどうかを日本の国立感染症研究所が解析している。未知の変異株の脅威が現実のものとして立ち現れる前に、もう一度、マスク着用や手洗いの励行、「密」回避といった感染防止策の徹底を国民に得心してもらえるか。首相に、最初の正念場が訪れた。 (前田倫之、久知邦)
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