昨年、「生理の貧困」というテーマに注目が集まり、自治体が生理用品を配布するなどの動きが各地に広がった。生理に関するそうしたムーブメントをリードした一人が、任意団体「#みんなの生理」の共同代表を務める谷口歩実さん(24)だ。谷口さんは「声を上げてよかった」と振り返る一方、活動を通じて違和感を持つことも多かったという。なぜだろうか。【藤沢美由紀/デジタル報道センター】
「これほど盛り上がるとは」
――谷口さんは大学在学中だった2019年12月に「生理用品を軽減税率対象にしてください!」という署名キャンペーンを始め、その後「#みんなの生理」を設立しました。特に21年3月に「若者の5人に1人が生理用品を買うのに苦労した経験がある」というアンケート結果を発表して以降、大きな注目が集まり、さまざまな動きも広がりました。
◆活動を始めたきっかけは、生理に関する卒業論文のためのインタビュー調査でした。話を聞いた友人たちが経済的負担について口にし、以前に祖母から生理用品のために生活費を切り詰めた経験を聞いたこともあり、おかしいと声を上げることにしました。署名キャンペーンを始めた後、すべての人の生理に関するニーズが満たされる社会を目指して団体としての取り組みを進めました。
これほど生理に関する動きが盛り上がるのは予想外でした。これまでプライベートな話とされてきた「生理」というトピックが公になるのは大事で、良かったと思っています。一方で、「生理の貧困」への注目からスタートし、「生理用品を買えない、かわいそうな若い女の子の問題」という狭い捉え方で多くの人に受け止められたことは、私たちの活動にとっての足かせになったとも感じました。報道でも生理用品を買えない当事者の話がとても多かったですね。当事者の声には説得力がある半面、かわいそうなエピソードを語らせ、消費してそれだけで終わるような報道にはやはり違和感がありました。
「困窮者のみ対象」への違和感
――「貧困」という面ばかり注目されることはどのような問題があるでしょうか。
◆生理用品を買えない層にフォーカスするのは悪いことではありません。でも、必需品である生理用品を買えないというのは本来あってはならない極端なケースであり、そのような状況を避けるため生理に関して誰もが利用できるインフラを整備する方向へ取り組むべきだと私たちは考えています。諸外国でも、公共施設のトイレに生理用品を設置したり税率を下げたりという議論がなされています。
しかし日本では昨年以降、困窮している人たちだけに絞って対応すればいいという前提で、動きが広がったように見えます。一部の自治体では窓口に来た人だけに生理用品を手渡したり、「困っている人のためのものです」という説明とともに生理用品を設置したりした学校がありました。そうした取り組みは「生理用品が必要な人=貧困状態」と見なすようで、対象者のハードルを上げ、生理用品を受け取りにくくなります。ある自治体の担当者を訪ねた際、誰でも生理用品を受け取れるよう公共施設のトイレへの設置をお願いしたら「困っている人を把握できなくなってしまう」と言われました。生理用品の配布が困っている人を集めるための手段となっていると感じました。こうした動きも想定外でした。
――他に違和感を持ったことはありますか。
◆生理が「生産性」と結びつけられることです。生理の問題に取り組むべき理由を「将来お母さんとなる体だから」などと出産や少子化との関連で語られることがあります。また、労働現場で女性社員の生産性を向…
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