燃料高の日々に終わりが来るー。7月6日に原油価格の指標である北海ブレント先物が4月以来となる1バレル=100ドル割れとなった時、世界の政治家や経営者、ドライバーの期待は高まった。
だが、むしろ需給のダイナミクスが示すのは、数年とは言わないまでも、向こう数カ月にわたる価格高騰だ。新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)が緩和され、燃料需要は依然として伸びている。一方で原油の精製能力は不足し、世界有数の産油国は生産量の限界に直面している。この間、ウクライナ侵攻でロシアからの輸出は抑えられてきた。
原油先物が3カ月ぶり安値、100ドルを一段と下回る-景気減速を警戒
国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は12日のフォーラムで、「世界が深刻さや複雑さの点で、これほど大きなエネルギー危機を目の当たりにしたことはない」とした上で、「最悪の事態をまだ経験していない公算がある。これは全世界に影響を及ぼしている」と発言した。
世界経済や政治への影響は計り知れない。ガソリン価格は今年これまでに42%上昇した。米国ではインフレ率を約40年ぶりの高水準に押し上げ、今年予定される米中間選挙で野党・共和党への追い風となる。ペルーやスリランカを含む国々では社会不安を引き起こし、世界の指導者が近年主張してきた脱炭素への移行はいったん滞るリスクに直面している。
必要な量の生産に苦戦する世界の現状は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で原油需要が数十年ぶり低水準に落ち込んだ2020年春の状況とは対照的。原油先物は当時、ニューヨーク市場で史上初めてゼロドルを下回った。IEAの予測では、世界の石油消費は来年2%以上拡大しパンデミック前の水準を上回る見通し。
これに対して、供給は追いつきそうになく、JPモルガン・チェースは6月の顧客向けリポートで、欧米による制裁がロシアの報復的な生産削減につながれば、原油相場は1バレル当たり 380ドルに達する可能性があるとの見方を示した。ロシアの原油生産は制裁や同国とのビジネスを避ける動きを受け、既に日量100万バレル以上減っている。
世界の原油生産の約4割を担う石油輸出国機構(OPEC)は目標達成が困難な状況で、ロシアで減った分を補える可能性は低い。設備の老朽化や長年の投資低迷、政治動向などが生産を抑える要因となっており、非加盟の産油国を加えた「OPECプラス」の5月の1日当たりの産油量は目標を270万バレル下回った。
増産への期待は余剰生産能力を持つサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)にかかっており、バイデン米大統領は働き掛けを強めている。バイデン氏は今週、就任後初めて中東諸国を訪問し、サウジのムハンマド皇太子と 会談する予定だ。人権侵害を理由にサウジを「のけ者」にするとしていたこれまでの方針を転換する形で、米政権が原油価格の抑制にいかに必死かを物語る事例と言える。
原油高は化石燃料からの脱却を進める上で必要とみる向きもあるが、現実には脱炭素への移行は一段と難しくなっている。世界で最も気候変動に敏感な政府でさえ、減税措置などを通じて従来型燃料の価格抑制に動いている。ブルームバーグ・ニュースがまとめたデータによると、20カ国以上がガソリン補助金を導入した。
原油弱気派もいる。シティグループは最近、需要に打撃を与えるリセッション(景気後退)が直撃した場合、原油相場は今年末までに 65ドルに下落すると予想。 「原油価格は全てのリセッション時にほぼ限界費用まで下落している」と指摘した。
原題:
Higher Oil Prices Are Poised to Last for Months, If Not Years(抜粋)
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
からの記事と詳細 ( 原油高の終わりはまだ先、数カ月は高騰続く見通し-供給不足解消せず - ブルームバーグ )
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