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Friday, August 5, 2022

ロシアのウクライナ侵略は「グローバル化の終わり」を告げるのか - 株式会社ニッセイ基礎研究所

我々が今グローバル化の終わりを目撃しているのかどうかは分からないが、これまで述べたような点に鑑みれば、その可能性は否定しきれないように思われる。では、仮にそうだとしたら、それは日本にとって何を意味するのだろうか。

資源を持たず、製造拠点がかなり海外に出ていて、本部機能とサービス業の比重が高い日本経済の構造からすれば、グローバル化の退潮に伴う影響を真剣に考える必要があるだろう。

金融関連の問題に絞って考えると、まず、長期的な展望としては、デフレの時代からインフレの時代への変化が考えられる。長年続いた世界的なデフレの時代が、グローバル化と技術革新とを二大ドライバーとしていたとすれば、グローバル化が終わり、気候変動対応によるコスト増などの要素も加われば、技術革新だけではデフレの時代が続かなくなる可能性があるだろう。

預金中心の日本の家計の資産構成は、インフレの時代に対しては脆弱な面がある。長い老後への備えを考えると、よりインフレ耐性の高い資産構成に変えていくことが望ましいのではないか。政府は、貯蓄から投資への流れを生み出し、成長の果実を多くの国民が手にする「資産所得倍増」を目指しているが、これはこうした意味でも大切な取組といえるだろう。

インフレの時代への移行は、低金利の時代から高金利の時代への移行も意味するだろう。長期的に見れば、デフレ脱却を目指す経済運営から、インフレにブレーキをかけながらの経済運営に移行するならば、実質金利が上昇していくことも考えられる。

日本企業は全体としては健全な財務状況にあるが、例えばコロナの遺産としての過剰債務が長く残ると、それについては対応が難しくなるかもしれない。実質金利の上昇には、財政の持続可能性への影響も考えられる。

国際分散投資、金融業の収益源を海外に求める、日本を国際金融センターとすることを目指す、などのことを進めていくにあたっても、地政学的な考慮の重要性が増していくのではないか。

より広くは、世界共通の課題への対処、国際的なルール形成、アジアにおける協力・連携、西側の団結、冷戦後の国際秩序の再構築などを巡って、日本がどのような役割を果たしていったらいいのかも、更に重い課題となっていくだろう。

G20が機能しにくい環境の中で来年G7議長国となる日本の役割については、本誌6月号で別に論じた。

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