街に秋風が吹き抜けるようになって、海水浴客でにぎわった砂浜は、ひっそりとしてきた。天然の砂浜に恵まれている千葉・富津市では10月に釣り未経験の初心者を対象に、誰でも簡単に楽しめるちょい投げ釣りの教室を初めて実施する。海水浴以外ではあまり使われない砂浜を、観光資源とする実例を集めて特集した。
砂浜でちょい投げ教室。意外とありそうでない。投げ釣りというジャンルはあるが、使用料の発生しない砂浜であえて簡単な投げ釣りのイベントを行う例は極めて少ない。10月8、9日の2日間、千葉・富津市の下洲海岸で「ちょい投げ」教室を富津市観光協会が主催する。教室の翌週に開催される横浜市で実施される人気イベント「東京湾大感謝祭」(10月15、16日、横浜大さん橋ホール)の千葉会場にも指定された。
富津市の浜金谷港と神奈川・横須賀市の久里浜港を定期便で結ぶ東京湾フェリーが2016年からSNSなどで参加者を募って、ちょい投げ教室を実施してきた。調査も含めてどの時期が最適なのか、富津市~鴨川市の砂浜で30回以上、四季を通じて行った結果、海水浴シーズン終了の8月末から寒くなる手前の11月末までが、初心者でも簡単にシロギスなどが釣れることが分かった。
今回のちょい投げ教室では、富津市観光協会に協力して運営する東京湾フェリーの寺元敏光取締役は「房総半島での1泊旅行をどうやったら増やせるかという思いで始めた企画。募集するとすぐ50人ぐらいは集まりますね。波打ち際から5メートルも投げれば何かは釣れる」と語り「富津市観光協会が主催してくれることで多くの人の目に触れることを願っています」と話した。
富津市も砂浜利用には前向き。昨年7月、金谷地区の鋸山(のこぎりやま)周辺が文化庁の認定する日本遺産候補地域になった。鋸山への観光アピールが2024年以降の認定のカギにもなっていて、富津市では鋸山から切り出された房州石が靖国神社の石塀等に使用され、山の周辺に残る石のまちの風情や日本寺大仏などの広報に力を入れている。その観光資源の1つとして、砂浜からのちょい投げにも力を注ぐ機運が出てきたのだ。
富津市の高橋恭市市長(52)は「子どものころから釣りに接してきた。東京から続く海岸で、一番最初の天然砂浜の海水浴場は富津市になる」と思い入れを込めて話し「砂浜からの投げ釣りは手軽なレジャーであまりに身近すぎて気付かなかったが、鋸山も含めた富津観光の戦力としてちょい投げも多くのみなさんに親しんでもらいたい」と言葉に力を込めた。
■「理想的かも」日本釣振興会も感心
釣りの普及振興を目的とする日本釣振興会本部(東京・八丁堀)では「確かに砂浜からの投げ釣りは、釣り人からするとあまりに手軽すぎてイベントにならないと思われます。ちょい投げの教室というのは首都圏の砂浜では聞いたことがない」と話し「ただ、釣りを普及させるなら自然を体感できる砂浜での釣りは理想的かもしれませんね」と感心していた。
日釣振では、ちょい投げイベントの取り組みにについて3つの利点をあげた。(1)船酔いがない 砂浜からなので船釣りとは違って体調管理も整えやすい。(2)近隣で買い物ができる 釣りの途中で砂浜近くのコンビニやスーパー、そして飲食店で買い物ができるため周辺の経済活動にも貢献できる。(3)環境保全の意識をあげる 最後は砂浜清掃をすると聞いていて、ゴミを出さずに使用前よりも砂浜をきれいにする活動は、釣りのイメージも向上しそう。
<千葉・館山市のサンドボード>
千葉・房総半島の砂浜では、最南端の館山市でサンドボードの人気が高い。館山市の海岸沿いには平砂浦(へいさうら)という「砂山(すなやま)」エリアがある。
館山市観光みなと課では「海岸の砂が強風で巻き上げられて砂丘のような砂の山が点在します。自然発生的に段ボールや雪山用のソリなどで地元民が斜度のある砂山を滑ったのが起源といわれている」と解説した。館山市のサーフショップ「SURFCO(サフコ)」ではサンドボードの貸し出しや滑り方なども教えている。
同店代表で元女子プロサーファー粟田都美さんは「誰でも簡単にできますよ。ただし、砂山を登るのに5分、滑走数秒という繰り返しですけど」と笑い「ファミリーやカップルなど館山の砂山を楽しみたいみなさんの定番になっていますね」と話した。
スノーボードと違ってストッパーとなるエッジはない。専用のシューズもなくそのままはだしでボードに乗るスタイル。夏場は砂山が暑くなりすぎるため、秋の季節からがサンドボードのトップシーズンとなる。
<神奈川・平塚市ではビーチサッカー>
神奈川・平塚市「湘南ベルマーレひらつかビーチパーク」は1990年に開業し、以来ビーチバレーやビーチサッカーなど砂浜の通年利用を市民に提案し続けている。
本来的にはボールの貸し出しなども無料で実施しているが、新型コロナウイルスの感染防止対策もあって同パークでは現在、備品レンタルは中止している。ただし、砂浜の施設に関して「ボールを持参していただいて、コートやピッチが空いていれば、使用は自由です」と同パークでは話す。
最近の流行ではブラジル版「羽子板」ともいえるフレスコボールで、同パークでは「ラケットとゴム製ボールを使って、相手を打ち負かすというよりもいかにラリーを継続できるかというルールですね。静かにブームになってきています」とのこと。落とさずに打ち合いを続けるフレスコボールが砂浜で注目されるかもしれない。
からの記事と詳細 ( 夏の終わり…誰もいなくなった砂浜、観光資源に!富津市で「ちょい投げ釣り教室」開催 - ニッカンスポーツ )
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