朝日新聞出版が発行する総合週刊誌「週刊朝日」が、5月最終週に発売する6月9日号で休刊となります。「日本最古」と言われる老舗総合週刊誌を、同業者はどんな思いで見送るのか。「ヘアヌード」という言葉の生みの親として知られる元「週刊現代」編集長・元木昌彦さんは、「週刊朝日はある種の奇跡だった」と語ります。
家庭に持って帰れる週刊誌
――総合週刊誌の中でも「新聞社系週刊誌」と呼ばれる週刊朝日とサンデー毎日の創刊がともに1922年。その後、50年代後半には週刊新潮、週刊現代、週刊文春などの「出版社系週刊誌」が相次いで創刊されます
50年代は、週刊朝日が1号あたり100万部以上を発行していた。出版社でも週刊誌を出そうって話はあちこちであったらしいけど、やはり人数も情報網も限られるので足踏みしていたようです。
もとき・まさひこ 1945年生まれ。70年講談社入社。月刊「現代」や「週刊現代」「婦人倶楽部」編集部を経て、「FRIDAY」「週刊現代」編集長などを歴任。著書に「週刊誌は死なず」(朝日新書)、「野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想」(現代書館)など。
新聞社のようにいろんなものを追いかけるわけにはいかない出版社の戦略は、選択と集中。柱のひとつはメディア批判。新聞は横並びで互いに批判しないから、そこを出版社系週刊誌で批判していく。もうひとつは、新聞社系では絶対できない、いわゆるスキャンダル。権力者や政治家たちの下半身だとかお金だとか、俗物的だけどみんな興味があるところに焦点を絞って、毎週試行錯誤しながらやっていたんですよ。
週刊朝日は家庭に持って帰れる週刊誌。出版社系は家になんて持って帰らなくていい、電車の網棚にでも読み捨ててくれればいい。コンセプトの違いが最初からあった。出版社系はあっという間に新聞社系を凌駕(りょうが)して、それからは週刊誌の売り上げがピークを迎える90年代まで、うなぎ登りで売れていきます。
90年代後半を境として、週刊誌の売り上げは減少に転じる。週刊朝日の2022年12月の平均発行部数は7万4125部だった
――元木さんは09年に「週刊誌は死なず」という新書を出していますが……。なぜ、週刊誌は売れなくなったのでしょうか
キオスクがなくなったのが大きな要因では。昔はちょっと大きな駅だと、一つのホームに三つぐらいキオスクがあった。電車の中づりで週刊誌の広告を見て、面白そうだなと思えば降りてすぐ買えた。わざわざコンビニや書店に行って買うもんじゃなくて、朝、駅で買って会社に持っていって、読み捨てて帰るのが普通だった。
――インターネットの影響はどうですか
今はネット社会と言われるけれど、政治ネタや国際情勢は別としても、ネットで話題になる情報はほとんど週刊誌から出てるんじゃないですか。今のジャニーズ事務所の問題もそう。
だから、週刊誌の影響力自体はあまり落ちてない気がする。新聞やテレビは週刊誌発の情報をほとんど取り上げないから、むしろ情報の流布という点では、ネットのある今の方が大きくなっていると思います。もし週刊誌がなくなったら、そういった情報はほとんど消えてしまう。
ひとつの例が、04年に休刊した月刊誌「噂(うわさ)の真相」。作家のスキャンダルがたくさん載っていたから、われわれ出版社の編集者たちがこぞって読んでいた。作家の醜聞は出版社系週刊誌は書けないし、テレビもドラマの原作の関係があるのでできない。新聞はもちろんやらない。そういう情報が、雑誌がなくなったとたんに全部消えてしまった。
ライバルではなかったけれど
――週刊現代やFRIDAYにいた頃、週刊朝日の印象はどうでしたか
失礼なことを言うけど、俺が…
からの記事と詳細 ( 名編集長が語る雑誌の終わり 週刊誌はなぜ売れなくなったのか ... - 朝日新聞デジタル )
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