国軍による軍事クーデター以降、混乱が続くミャンマーで、武器を手に抵抗を続けるビルマ民族の男性(28)が、潜伏先の南東部カイン州で出会ったカレン民族の女性(31)と結婚した。周囲では、民族の違いや取り巻く環境から2人の結婚に反対する声も多かったが、2人は雨期が明けた昨年12月にささやかな式を挙げ、女性は新たな命を宿している。(バンコク・藤川大樹)
◆「カレン民族とビルマ民族の架け橋になりたい」
男性は中部エヤワディ地域出身。クーデター前までは日系自動車メーカーの販売員やエンジニアなどで生計を立てていた。
2021年2月に国軍によるクーデターが起きると、抗議デモに加わった。国軍が弾圧を強めたことから「武器を持って戦うしかない」と決意し、同5月に少数民族武装勢力「カレン民族同盟(KNU)」の支配地域へ逃れ、民主派の武装組織「国民防衛隊(PDF)」に入った。
22年の初め、買い物へ出かけた村の小さな商店で出会ったのが女性だった。もともとは小学校の教師だったが、クーデター後は職務を放棄する「市民不服従運動(CDM)」に加わり、故郷の村へ戻っていた。男性は「美しく、優しい性格にひかれ、告白した」と振り返る。
ただ、返事をもらえるまでには数カ月かかった。女性は「人生のパートナーになる人を選ぶのだから、しっかり考えなければいけないと思った」と笑う。交際から2カ月後の昨年6月に結婚を誓った。
しかし、2人の結婚には反対の声も少なくなかった。国内最古の少数民族武装勢力であるKNUは、ビルマ民族を主体とする国軍との戦闘を長年続けており、ビルマ民族への不信感が根強い。女性は両親から「本当に彼を信頼できるのか」「彼は戦いが終わったら、村を出て行くのではないか」と問われたという。
戦闘で命を落とす危険も付きまとう。男性はこれまで何度も前線へ赴き、大きな戦闘を3度経験した。主に車の運転や物資の運搬など後方支援の任務に当たっているものの、4月上旬にカイン州のシュエコッコ地区周辺で起きた戦闘では国軍兵士の狙撃を受け、右腕に大けがを負った。それでも男性は当初、身重の妻を心配させまいと負傷したことを伝えなかったという。
戦闘が続く中、デートらしいデートはしたことがない。妻の出産を約2カ月後に控え、男性は「この戦いが終わり、平和になったら、生まれてくる子供と3人で楽しく暮らしたい」と希望を語る。「生涯をかけて彼女を守り、カレン民族とビルマ民族の架け橋になりたい」
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