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Friday, May 12, 2023

アングル:家計債務との「終わりなき戦い」、タイ総選挙の焦点に - ロイター (Reuters Japan)

[バンコク 9日 ロイター] - カビタ・ウォンギャカセムさん(48)は、タイの首都バンコクで小さな企業を経営している。郊外に2階建ての自宅を所有し、ピックアップトラックを運転し、2人の娘を評判のいい学校に通わせている。

 家計債務の問題は5月14日に迫ったタイ総選挙でも大きな争点になっている。写真は家計の帳尻を合わせるための収入を確保するのに必死の毎日だ、と語るカビタ・ウォンギャカセムさん。バンコク郊外で4月撮影(2023年 ロイター/Athit Perawongmetha)

だがカビタさんは、家計の帳尻を合わせるための収入を確保するのに必死の毎日だ、と語る。会社の業務は、大手エネルギー企業向けのサービス提供だ。

「絶えずお金のことばかり考えている」。カビタさんは話しながら泣きだしてしまった。

5人家族の稼ぎ手はカビタさん1人。約800万バーツ(約3190万円)の借金を抱え、現金預金はゼロだ。

「日によっては、怖くて朝起きられないことがある。起きて、お金が全くないという現実に直面したくない」

国際決済銀行(BIS)のランキングによれば、タイの家計債務の対国内総生産(GDP)比はアジア有数の高さで、同国を上回るのは韓国と香港だけだ。国民の3分の1に相当する千万単位の人々が、負債を抱えている。

家計債務の問題は5月14日に迫った総選挙でも大きな争点になっており、主要政党はいずれも、賃上げと債務支払いの一時停止、さらには無保証の融資や一時金の給付を公約に掲げている。

野党・前進党の首相候補ピタ・リムジャラーンラット氏は、年間最低賃金の改定を提案しており、長年続く格差問題の解消を目指すとしている。

このところ支持率を急速に高めているピタ氏は「計算上は、1%が頂点に、99%が底辺にという構図だ」と言う。

「いったん借金を抱えてしまったら、はしごを登っていくのはとても難しくなる」

タイの中央銀行も憂慮を深めている。タイ中銀は2月、金融リスクの低減に向けて、2022年末に対GDP比86.9%だった家計債務水準を80%以下に抑制すべきだとの見解を示した。

アナリストらは、政党の大げさな選挙公約は、家計債務に由来するマクロ経済上のリスクを高める可能性があると指摘している。

シンクタンク「タイ開発研究所」の試算では、2月の時点で分析したところ、政策の重複を除いて、主要政党9党による選挙公約を実現するための費用は総額3兆1400億バーツに達した。これは年間の国家予算3兆1800億バーツをわずかに下回るだけだ。

今回の選挙では、軍の支持を受けた既得権層と連携する政党とポピュリスト的な野党との戦いが再現されようとしている。どちらが勝利を収めるとしても、この国を悩ませる債務問題に取り組まざるをえないだろう。

「家計債務の比率が高ければ、今後、消費刺激策を打ち出すことが容易でなくなる。国民は債務の返済と銀行への融資申し込みで手一杯だからだ」と語るのは、タイ商工会議所大学(UTCC)のタナバス・フォンビチャイ総長。

<「前触れなし」のコロナ禍>

多くのタイ国民にとって、債務の負担は若いうちから始まり、生涯にわたって続く可能性がある。

25─29歳の国民のうち約58%は債務を抱えており、60歳以上の4分の1はまだ債務返済を終えていない。タイ中銀のデータによれば、債務残高の平均額は40万バーツを超える。

タイ中銀は、全体ではクレジットカードや個人向けローン利用者の約30%は所得の10─25倍に達する債務を抱えており、これは国際的な水準の2倍に相当するとしている。

家計債務は長年にわたり厄介な問題だったが、新型コロナウイルスによるパンデミック以来いっそうの悪化を見ており、タイ中銀によれば、不良債権の件数が1000万件とほぼ倍増したという。

他のいくつかの国と比較して、人口約7100万人のタイではコロナ禍による犠牲はそこまで深刻ではなかったものの、観光産業に強く依存している経済を揺るがし、所得に打撃を与えた。

債務に苦しむ人々を支援する全国規模のボランティア団体で代表を務めるアチン・チュングログ氏は、「何の前触れもなかった」と語る。

「歩いていたら突風に吹き飛ばされて崖から転落したような感じだ」

UTCCは4月、毎月の給与が1万5000バーツ以下の回答者1300人を対象とした調査を行い、債務水準が2010年以来最高になっているという結果を得た。

3月に行われたある調査では、内陸の農村地域では農家の90%が未返済の債務を抱えており、「債務の悪循環」が生じていることが示された。

冒頭で紹介したカビタさんは、コロナ禍のもとで収入は減少したが、約20人のスタッフの感染対策を急がなければならなかったため、支出は増大したと語った。

スタッフの給与を払い、家計をやりくりしていくために、銀行以外からも融資を求めざるをえなかったという。

先日の夜、政治家たちのテレビ討論を観ていたカビタさんは、「政党が提供する給付金はありがたいが、多額の債務を抱えている人にとってはほとんど役に立たない、と話した。

カビタさんは、亡くなった人の資産を債務返済のために債権者が取得する法律に触れ、「私は死ぬわけにはいかない」と言う。

「借金との戦いはいつまでも終らない」

(Devjyot Ghoshal記者、Juarawee Kittisilpa記者、Orathai Sriring記者、翻訳:エァクレーレン)

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