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Sunday, August 7, 2022

[山口二郎コラム] 安倍政治の終わりと戦後の行方 - The Hankyoreh japan

岸田文雄首相が東京自民党本部で今回の選挙を振り返り、今後の政策方向を示す記者会見を行っている=東京/ロイター・聯合ニュース

 7月に行われた参議院選挙は、いくつかのシステムの終わりを意味する重要なものだった。

 第1は、1989年(この年は冷戦が終わった年でもあり、日本では昭和が終わった年であった)の参院選で始まった政治改革と政党再編の試みが失敗に終わったことである。90年前後に続発した自民党政権の大規模な腐敗事件は政治改革の世論を沸騰させ、冷戦以後の国家路線、バブル経済崩壊と人口減少社会への移行など巨大な政策課題にこたえるための政党政治を求める挑戦が繰り返された。それは2009年の政権交代という成果をもたらしたが、民主党政権が崩壊した後、自民党に挑戦する政党を作る作業は混迷を続けた。今回の参院選では、野党陣営の中で政権獲得を目指さない政党がいくつも現れ、日本の政会はガリバーと小人たちのような状況に陥った。

 第2は、戦後続いてきた平和主義の終わりである。平和国家の象徴である憲法9条について、保守勢力は改正を主張してきた。これに対して、かつての社会党(今の社会民主党)が中心になって憲法擁護を主張し、常に国会で3分の1程度の勢力を維持してきた。今回の選挙に当たって自民党だけでなく一部の野党も憲法改正を主張し、広い意味での改憲勢力は発議に必要な3分の2を大きく上回る議席を得た。護憲の旗頭だった社民党は比例代表で1議席を得ただけで、その衰弱は決定的である。ウクライナでの戦争という危機の中で、防衛力の強化と日米軍事同盟を支持する声は圧倒的多数となった。

 第3は、安倍政治の終わりである。安倍晋三元首相が選挙運動中に暗殺されたことは、日本中に衝撃を与えた。安倍氏は首相在任中に、集団的自衛権の行使を可能にする安保法制を成立させ、退任後も中国を念頭に置いた積極的な防衛政策を主張し、自民党に大きな影響を与えてきた。第2の点で指摘したように戦後の平和主義は崩れているが、他方で平和主義を終わらせようとした安倍氏の死去は憲法改正の動きの推進力が失われることを意味する。

 さらに、安倍氏暗殺の背景にある統一教会と保守政治家の強い結びつきは日本政治の暗部を明るみに出している。容疑者は、母親が統一教会に家財すべてを献納して破産に追い込まれ、人生を破壊されたことを恨み、この教団と親密な関係にある安倍氏を殺害したと供述している。統一教会が日本に進出した時には安倍氏の祖父、岸信介元首相が支援したこと、この教会が日本人信者から莫大な資金を巻き上げ、多くの被害者を出したこと、自民党の多くの政治家が統一教会信者の支援を得ていたことなどが次々と明らかにされている。

 多くの日本人女性が洗脳によって入信させられ、集団結婚式で見知らぬ男性と結婚させられ行方知れずになっていることは、拉致事件と同様の重大な人権侵害である。そうした問題の報道は30年前からあったが、多くの政治家はそれを無視して、統一教会を利用し、また利用された。政治家による統一教会の犯罪的活動への加担について、この機会に全貌を明らかにしなければならない。

 参院選の結果、自民党一強体制はいっそう強化され、岸田文雄政権は自民党内の権力バランスに注意しなければならないにしても、自らが望む政策を実現する好機を得ている。しかし、安倍氏が望んだような憲法改正には困難が付きまとう。改憲派の政治家は統一教会と近い者が多い。人権侵害を繰り返してきた統一教会のために、信用を与えるような宣伝活動を行ったような政治家に憲法改正を言う資格があるのかという議論が当然出てくるだろう。

 岸田首相は安倍氏死去の直後に、国葬を行うと決定した。しかし、安倍氏の首相としての功罪についてもいろいろ議論が続いている。また、統一教会との関係が明らかになるにつれて、政治家としての資質を疑う声も出ている。いくつかの世論調査では国葬への反対論が過半数となっている。岸田首相にとって、自民党の過去の膿を出すことが、未来に向けた政策展開の前提条件となる。

//ハンギョレ新聞社

山口二郎|法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1053803.html韓国語記事入力:2022-08-08 02:39

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