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Sunday, August 7, 2022

「練習は終わり」盈進ナインの肩の力を抜いた監督の一言 夏の甲子園 - 毎日新聞 - 毎日新聞

【鶴岡東-盈進】鶴岡東に敗れ選手と整列する盈進の佐藤康彦監督(左)=阪神甲子園球場で2022年8月7日、中川祐一撮影 拡大
【鶴岡東-盈進】鶴岡東に敗れ選手と整列する盈進の佐藤康彦監督(左)=阪神甲子園球場で2022年8月7日、中川祐一撮影

 第104回全国高校野球選手権大会は第2日の7日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で1回戦があり、48年ぶり出場の盈進(えいしん)=広島=が鶴岡東(山形)に7―12で敗れた。

 48年ぶり出場の盈進は失策などのミスが相次ぎ、序盤から出はなをくじかれた。だが、五回終了後のグラウンド整備中、社会人の都市対抗で優勝経験がある佐藤康彦監督が選手たちに優しく問いかけた。「どうだ、甲子園は。普通にやらせてもらえないだろ」。苦笑いして肩の力が抜けた選手たちに続けた。「練習は終わり。六回から試合開始だ」

 選手たちは落ち着きを取り戻した。六回に好機を作って敵失で1点を奪い、この試合で最小の3点差まで迫った。五回まで5失策だったが、六回以降はゼロになった。4安打の中島知寛が「ベンチでも『この2回でやってやるぞ』という雰囲気だった」という八回にも2点を返した。7―12で敗れたものの、相手を上回る13安打を放ち、佐藤監督も「粘り強い試合ができた」とねぎらった。

【鶴岡東-盈進】二回裏盈進1死二塁、中島が適時三塁打を放つ=阪神甲子園球場で2022年8月7日、吉田航太撮影 拡大
【鶴岡東-盈進】二回裏盈進1死二塁、中島が適時三塁打を放つ=阪神甲子園球場で2022年8月7日、吉田航太撮影

 何の因果か。佐藤監督が生まれたのはちょうど48年前の1974年8月7日。試合前、朝食会場に向かうと、選手から「ハッピーバースデートゥーユー」の合唱が贈られた。これまでチームが甲子園から遠ざかっている年数は「自分の年を言っておけばよかった」と笑うが、今夏、自らが育てた選手が塗り替えた。

 次の目標は「もっと短いスパンで、連続して(甲子園に)行けるように」と佐藤監督。主将の朝生弦大は「どんな球場でも自分たちのプレーができるようにしてほしい」と後輩にエールを送る。長らく「古豪」と言われた盈進の時計は、再び動き出した。

  ◇

 佐藤監督は劣勢が続いても、落ち着いて選手に語りかけた。その姿はまるで「父親」のようだった。母校を48年ぶりの出場に導き、自身の誕生日に初めて甲子園でタクトを振った。

【鶴岡東-盈進】力投する盈進の先発・向井=阪神甲子園球場で2022年8月7日、前田梨里子撮影 拡大
【鶴岡東-盈進】力投する盈進の先発・向井=阪神甲子園球場で2022年8月7日、前田梨里子撮影

 盈進高、創価大を経て、王子製紙(現・王子)で野球を続けた。「5番・一塁」で出場した2004年都市対抗大会で優勝メンバーとなった。当時は主将だった王子の湯浅貴博監督は「(佐藤監督は)グラウンドで下を向いたり、悩んだりするのを見たことがない。よく笑うムードメーカー」と表現する。

 16年に母校の監督に就任すると、社会人時代に厳しいトーナメントを戦い続けた経験を生かし、「守り中心のチーム」を目指してきた。王子製紙の営業部で磨いたスキルが生き、指導は高校生にも分かりやすいよう丁寧かつ簡潔だ。現役時代と同様に選手から慕われており、エースの向井勇は「お父さんに近くて、一番大きい存在です」と恥ずかしげもなく言う。

 今夏は守備力の安定に加え、向井ら3年生5人による継投が奏功し、広島大会の全7試合を計10失点で勝ち抜いた。甲子園では壁にはね返されたが、存在感は示した。【森野俊】

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