● コロナショックでどん底の世界経済 回復までは遠い道のりに
現在、日本経済は新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んでいますが、経営者はこの状況が長引くことを念頭に経営をしなければなりません。今回はまず、マクロ経済の状況を分析します。
新型コロナウイルス感染拡大により、米国、中国、ＥＵという世界のＧＤＰ（国内総生産）の約6割を占める国々が機能不全に陥っています。国際通貨基金（ＩＭＦ）が発表した最新の「世界経済見通し」では、2020年の成長率予測をマイナス3.0％（19年は2.9％のプラス成長）と見込んでおり、ＩＭＦのゲオルギエバ専務理事の「大恐慌以来の経済悪化となる」という発言は誇張とは思えません。4月～6月は特に厳しい状況になると考えられます。
各国政府は自国の経済崩壊を防ぐために経済対策を次々に打ち出しています。トランプ米大統領が認めた財政出動は、4月の時点ですでにリーマンショック時を大きく上回る2兆9000億ドル規模。しかしニューヨークをはじめとする各都市でロックダウンが続いているため、経済活動の再開のめどが立っておらず、仮に数カ月で終息に向かったとしても、どん底まで落ち込んだ経済のリカバリーには相当な時間がかかりそうです。
日本経済もかなり危ない状況に陥っています。タクシーの運転手、ホテルのフロントマン、小売店の店頭販売員、中小企業経営者など景気を肌で感じている人たちを対象とした内閣府による「景気ウォッチャー調査」の2020年3月調査（4月8日発表）では、現状判断ＤＩ（季節調整値）が前月差13.2ポイント低下の「14.2」まで落ち、リーマンショック直後の2008年12月の「15.9」や東日本大震災直後の2011年3月の「27.7」を大きく下回りました。これは比較可能な2002年1月以来最低の数字で、「景気ウォッチャー調査」は現状を「極めて厳しい状況にある。先行きについては、一段と厳しさが増すとみている」とまとめています。
「景気ウォッチャー調査」の景況感が良いか、悪いかの境目は「50」です。2019年10月の消費税増税で「36.9」まで下がり、その後少し持ち直して20年1月は「41.9」まで回復（といっても50に届いていませんが）していましたが、その後2月「27.4」、3月「14.2」と急降下しました。
中でも際立って悪化したのが「家計動向関連」分野の飲食関連で、「0.7」でした。同調査の企業動向関連でも製造業「21.7」（前月差－9.3）、非製造業17.5（同－12.4）というように、どちらも大きく景況感が悪化しています。しかもこれは緊急事態宣言が発令（4月7日）される前の数字です。4月は信じられないほど悪い数字になることは避けられないでしょう。新型コロナウイルス終息のめどが立たない限り、景気の底がもっと深くなることを覚悟しなければなりません。
● 経営者はとにかく 現預金を確保しておくべき
政府は緊急経済対策を実施するため国民1人当たり現金10万円の給付や中小・小規模事業者への支援策を盛り込んだ20年度補正予算を成立させました。現金10万円給付の予算は12兆8800億円にのぼり、景気対策の規模としては小さくはないのですが、感染拡大が終息せず、5月6日が期限となっている緊急事態宣言の延長が議論されている中、国民の先行きに対する不安が消えず、すぐに消費に回るとは思えません。あくまでも緊急時の下支えです。
そこで企業経営者が第一に考えなければいけないのは資金繰りです。中小企業には、「持続化給付金」（法人に最大200万円、個人事業者に同100万円）が支給されますが、まったく十分とは言えません。中堅企業や大企業ならなおさらです。また、緊急事態宣言が延長されるなど、現在の状況が長引けば、資金繰りが苦しくなるところがさらに多く出てくるので、重要な取引先の経営状態に注意しておかなければなりません。連鎖倒産の危険性があります。
今、マスクを販売しているのを見かけたら、誰でも買おうと思うはずです。経営者はそれと同じ気持ちで、資金繰りのチャンスがあったらとにかく早めに手当てをしておいた方がいいです。とにかく普段より多めに資金を確保してください。自分でコントロールできる現預金を十分に持つことが、危機を乗り越えるために必要な策です。
次回は「アフターコロナ」を見越して、経営者が今やるべきことをお話しします。
（小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶）
小宮一慶
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