しかし、実際の消費行動はそこまで単一的ではなく、所有と利用のニーズが入り混じる。一方、メーカーや小売側には新たな消費行動に対応できる販売チャネルをつくりたいというニーズが出てきている。
そんな双方のニーズを満たすことができるサービスが今年の5月に登場した。株式会社TENTが開発した出店型のレンタルモール「カウリル」だ。
同サービスは昨年の3月に、個人間のアウトドア用品レンタル&売買アプリ(ios版)としてリリースされていたが、今回はそのリニューアルとなる。
今回は同社代表の松田氏にインタビューを行い、その特徴やサービスに込める思いについて聞いてきた。
趣味の領域は利用だけじゃなく所有もしたい
ーーまずは「カウリル」がどのようなサービスか教えていただけますか?松田:簡単にいうとYahoo!ショッピングや楽天市場といったショッピングモールのレンタル版です。モールにはさまざまなレンタルストアが出店していて、ユーザーはその中から借りたいものを見つけてすぐに借りることができます。
また、機能としては「お試し」的な要素もあって、レンタルしてみて気に入ったら差額を支払って購入することができる、というのも特徴のひとつですね。
現時点ではアウトドア関連のストアが中心ですが、今後は家電やアパレルなどさまざまなカテゴリーのレンタルストアが出店するイメージで進めています。
ーーなるほど。御社ではこれまでアウトドア関連の事業を展開していましたが、今回全方位型のプラットフォームを立ち上げたのは、どのような背景があったのでしょうか?
松田:弊社では3年ほど前から「TENTAL」というキャンプ用品のレンタルサービスを運営しています。キャンプ用品というのは、そこそこ高額なアイテムが多く、かつ頻繁に使うものではないのでレンタルサービスとの相性が良かったんです。
翻って、趣味の領域って「所有欲」も結構あるんですよね。自分が好きなものを持っていたいというニーズです。
試しに使ってみたいとか、使いたいときだけ使いたいとかっていうニーズと、とはいえ所有したいという両方のニーズに応えられるサービスを作ろうと思って、昨年の3月にまずはアウトドア用品に限定したレンタル&売買アプリの「カウリル」をリリースしました。
ーー今回のリニューアルではそれを全方位にしたんですね?
松田:はい、もともと「TENTAL」を運営できていたのは、自分がキャンプ好きでキャンプ用品にも詳しくて、どの製品が人気で、利益率が高くて、回収率が高くて……というのを知っていたからだと思うんです。
これって、他のカテゴリーでも同じだなと思って。ゴルフにしても釣りにしても、詳しい人は、どの用品が人気で収益率が高いとかの重要な要素を、感覚やデータ等で知っていると思うんですよね。であれば、それぞれのカテゴリーに特化した人や会社が、簡単にレンタルサービスを運営できる仕組みを作れば、全方位で提供することができるな、と。
「売ったら終わり」以外の収益を
ーーユーザーにとっては「利用」と「所有」双方のニーズを満たせるサービスだということがわかりましたが、出店者側のメリットはいかがでしょうか?松田:出店者側は、これまでになかった新しい収益チャネルをつくることができます。
いま、世の中ではフリマアプリなどの普及によって、個人間売買なども当たり前に行われるようになってきました。企業からモノを買わないといけない、という時代ではなくなってきているんですよね。
そうやって消費者行動が多様化しているなか、モノを作っている側の企業は一回売ったらそれで終わり。その先の二次流通、三次流通にはまだ関与出来ずにいることが多い印象があります。
少し話がずれますが、例えば、作った人よりも転売する人のほうが儲かるような事例って多々発生していると思うんですが、これもモヤモヤするなぁと思っていて……。
なので、モノを作った人がいちばん利益を得られる仕組みをつくりたいな、と。
ーー「カウリル」がメーカーや小売店にとっての新しいチャネルになるわけですね。まだサービスをリリースしたばかりですが、反響はいかがですか?
松田:ありがたいことに、興味を持ってくださる企業からのお問い合わせも出始めています。
ただ、課題もあって。たとえば、これまでレンタルをやっていなかった企業にとっては、自社でのオペレーションやカスタマーサポートに不安を持つケースが多いんです。
このあたりは弊社でも運用をサポートできる体制を整えたいと思っていて、まずはアウトドアの領域に限定して、レンタルのオペレーションをすべて代行するサービスも始めています。もちろんアウトドア以外のカテゴリについても運用代行可能な倉庫会社との連携を模索中です。
ほかにも、レンタルサービスに特化した在庫管理ツールを独自に開発しました。そのツールを介してシームレスにカウリルに出店する仕組みを提供する予定です。この在庫管理ツールの話もしたいのですが、それはまた次の機会に。(笑)
ーーメーカーや小売がより出店しやすくなるような仕組みを作っているんですね。では最後に、今後の展望について伺えますか?
松田:まずはモール型なので出店店舗を増やしていくのが最優先です。
カテゴリについても、今はキャンプ用品や登山用品などがメインですが、今後は釣りやウィンタースポーツ、ゴルフといった外で遊ぶ趣味領域全般や、外遊びを楽しむユーザーが利用する電化製品、例えばアクションカメラやドローン等を扱うストアの出店も広げていきたいと思っています。
休みの日、どこかに出かけるときに、カウリルで何でも借りられる状態を早く整えたいですね。
松田基臣(まつだ・もとおみ)
自社メディアの運営やLPOツール開発、ASPサービスの立ち上げ等、20年近くIT業界で働きつつ、大のアウトドア好き。20代前半には日本最後の秘境と呼ばれる鹿児島県吐噶喇列島に移住し父親が経営する民宿経営をサポート。趣味のアウトドアとレンタル領域に可能性を感じ、2017年7月、株式会社TENTを設立。
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June 15, 2020 at 06:01AM
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出店型レンタルモール「カウリル」が提示する“売って終わり”以外の新しいカタチとは - Techable
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