政府の観光支援事業「Go To トラベル」の東京都発着分の除外について「国が判断すべきだ」との主張を貫いてきた小池百合子知事が1日、菅義偉首相と会談し、一転して、高齢者らの利用自粛を求めた背景には、新型コロナウイルスによる重症者数の高止まりや世論の懸念がある。
小池氏はこれまで「全国的な視点から国が判断するのが筋だ」と述べ、政府による主体的な判断を求めてきた。もともと政府は7月の事業スタート時に、東京を除外してきた経緯があるのに、11月の感染状況悪化を受けて、都に除外の是非の判断を要求。都側にすれば、経済にブレーキを踏んだ場合の批判の矛先を、都側に向けさせるように映った。ある都幹部は「国は自分たちがやりたくないことを押しつけている」と漏らす。
ところが感染状況は改善の兆しが見られず、重症者は緊急事態宣言解除後の最多を連日のように更新。11月30日には70人に達し、医療体制への懸念が高まる一方だった。複数の都幹部によると「都民の心配も高まっている。何もしないわけにはいかない。責任のなすり付け合いのようなことをしている場合ではない」との判断に傾いたという。
小池氏は1日の菅義偉首相との会談後、報道陣に「重症者を出さない、自ら重症者にならない、そのための方策」と説明。ただ高齢者らに限定した今回の対応で、どれだけ抑制できるかは見通せない。「(重症者増で)通常の医療体制との両立が極めて困難になる」との都の医療専門家の懸念の払拭には、政府と都の連携が、より求められる。(小倉貞俊、岡本太、松尾博史)
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