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Monday, October 4, 2021

[LEADERS]「スシロー」終わりなき戦い…FOOD & LIFE COMPANIES 社長 水留浩一氏 53 - 読売新聞

 回転ずし首位の「スシロー」は、コロナ禍の逆風を追い風に変え、国内外で積極的な出店を続けている。運営会社の水留浩一社長が、収束後を見据えた成長戦略を語る。

 <コロナ禍で多くの外食産業が苦境に陥っているのとは対照的に、業績は好調だ。売上高は前年比で20%伸び、最終利益は過去最高を見込む>

 緊急事態宣言の対象地域となった店舗を中心に、営業時間の制限で少なからず影響を受けています。一方で、外出の自粛や在宅勤務の定着でテイクアウトや宅配の需要は急増しています。環境の変化に素早く対応できたことで、来店客数の減少を補えました。

 店舗にはスマートフォンで注文した商品を店員と対面せず受け取れる「自動土産ロッカー」を設置しています。持ち帰り専門の「スシロー To Go」も始めました。

 店内でも安心して食事できるよう、自動案内機や無人レジなどによる非接触型の接客を強化しています。画像を人工知能が認識し、従業員が皿の枚数を数えなくても自動的に会計ができる仕組みも導入しました。

 こうした取り組みは、実はコロナ以前から進めてきたものです。人手不足の問題を解決するには、従業員の様々な作業を自動化して生産性を上げる必要があります。

 「ウーバーイーツ」など宅配代行サービスとも早くから連携してきました。高齢化の進行で、配達してほしいというお客様が増えていくと予測されるからです。将来に向けて手を打ってきたのが、コロナで10年分くらい一気に動いた感覚ですね。

 <コロナ禍の収束が見通しにくい状況でも、年間30か所強の出店ペースは落とさない方針だ>

 ワクチンの接種が広がり、徐々に営業活動は元に戻るでしょう。その時に備え、攻めの態勢を整えています。都心部では撤退する飲食店も相次いでいて、平時なら難しいような条件の良い場所に出店する好機です。

 競争の激化を懸念する声はあります。しかし既存店の売上高は、前年度比プラスを維持しています。店舗数は、現在の約600店から、800店以上に増やせると考えています。

 スシローの客単価は1000円超で、それほど高くはない。お客さまには日常の中で楽しんでもらいたいのです。「今日はお母さん、仕事で遅くなったからスシローに行きましょう」という形で、気軽に利用していただきたい。

 その意味で、一時のブームにしてはいけないと気をつけています。スシローに行くのが「かっこいい」と捉えられると、いずれ「もう古い」と飽きられてしまいます。

 すしのネタ自体はある程度決まっています。その中で、できるだけ高い品質のものを安い価格で提供したい。これは終わりなき戦いです。ただし天然の水産資源は減少している。人工的に増やせる養殖魚に重心を移し、環境への負荷を軽減することは中期的なテーマとなっています。

 具体的には、生産者の方と複数年にわたる契約を結び、より安定的に養殖に向き合ってもらえるよう協力関係を築いています。資本を入れ、経営に参加させていただく場合もあります。少し先を見据え、ITやゲノム編集などを活用し、効率的な養殖も可能にする構想です。

 <今年4月、社名を「スシローグローバルホールディングス」から「FOOD & LIFE COMPANIES」に変えた>

 「食」に関する幅広い事業展開を通じて、おいしいものを世界に広げていきたいという思いを込めました。

 スシローが今後も中核事業であることは変わらないのですが、海外市場の開拓や、回転ずし以外の業態に挑戦していくための意識変革を社内に促す狙いもあります。

 台湾、シンガポールなどアジア地域に約50店舗を展開しています。今月1日に開幕したドバイ国際博覧会(万博)では日本館で唯一のレストランとして出店しています。

 万博の店舗では、イスラムの戒律に沿った「ハラル」は守るものの、基本的には日本国内のメニューをそのまま提供します。本物のすしを体験していただきたいからです。日本の航空会社が就航している都市に、スシローの看板を出すのが目標です。

 「食」に関して、消費者がおいしさに不満を持っている業態があれば、我々がそこをおいしくしていきたい。持ち帰りずし店の京樽を買収した理由の一つです。看板商品の「茶きん ずし 」の味は決して落ちていないけれど、世の中の平均点が上がり、どこかで昔のものになっていました。

 <東大理学部の出身。電通を経て外資系コンサルティング会社に入り、企業再生の経験を積んだ。会社更生法を申請した日本航空の再建にも携わった異色の経歴を持つ>

 子どもの頃から天文学者を夢見ていました。でも大学で周囲を見渡すと、自分よりも優秀な人が大勢いた。「これは自分がやる世界じゃない」と研究者の道を諦めました。メディアに興味があったので電通に就職したのですが、広告のクライアントと接するうち、経営の面白さに目ざめたのです。商品の開発から販売まで全体を見ていく仕事がしたくなり、コンサルティング会社に移りました。

 最も思い出深いのは、やはり日本航空での経験です。京セラ創業者で、当時は日航会長を務めていた稲盛和夫さんの隣に座って仕事をしました。特に感銘を受けたのが人を動かす力です。どうしたら社員が一生懸命に働くのか。一から起業して、多様な経歴の社員を最大限生かして事業を成長に導いたノウハウは、日本航空のような大企業でも、十分に機能していました。

 <全く未経験の回転ずし業界に転じたのは、幾つか受けた提案の中で、一番可能性があると判断したからだ>

 海外の都市を訪れる度に、日本ほど良心的な価格でおいしいものが食べられる国はないと感じていました。安全や衛生、自動化などの技術でも優位性があります。すしは日本起源の料理として知名度があり、うまく輸出できたら高い競争力を発揮するはずだと思ったのです。

 製品はコピーされたらおしまいですが、サービスは簡単にまねできません。従業員をトレーニングして味や接客を再現するには、ものすごく手間がかかります。外食をはじめとするサービス産業は、日本から海外に打って出て戦える最後の業界ではないでしょうか。その突破口をスシローが開きたいと考えています。

 聞き手・三宅隆政 写真・永尾泰史

 社長就任から2年後の2017年、運営会社を8年ぶりの再上場に導いた際に東京証券取引所から贈られた。運営会社は投資ファンドの傘下となり、09年に上場廃止となっていた。右肩上がりの業績を受け、現在の時価総額は再上場時に比べ6倍以上になっている。

 将来の目標として、外食産業で初となる「売上高1兆円」の達成を掲げている。2021年9月期の売上高は2430億円の見通しだが、「海外事業の伸びしろは大きい」との目算だ。

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