#無濾過生原酒とミント
夏が似合う日本酒に、ミントの清涼感を重ねて
「近年、品質管理技術の向上によって流通が広がった無濾過生原酒。みずみずしい口当たりは、夏に似合います。アルコール度数が高いので、氷と合わせるのがおすすめ」(千葉氏)。そこにミントをプラス。モヒートといえばラム酒を軸にするのが本式だが、「フレッシュハーブを加えることで、香りのバリエーションが広がり、日本酒特有の麹臭をマスキングする効果も」。
西村 青のスリットグラス
ピーター・アイビーの工房「流動研究所」に勤務しながら、同工房にて週に1度、自らの作品づくりを行う新鋭のガラス作家・西村青氏。蛍光灯のリサイクルガラスを原料に、吹きガラスで生み出す、デザインとオブジェの狭間にあるようなテーブルウェア。ガラス本来の透明感がありつつも、ソリッドかつセンシュアルな佇まいも印象づける。ほんのりスモーキーな色合い、手仕事の美しい痕跡が伝わる装飾的スリットなど、複雑で難易度の高い技を作品に潜ませる。
#にごり酒と山椒粉
ヨーグルトのような爽やかさが新感覚
にごり酒とは発酵したもろみを搾るときに目の粗い布などで漉した清酒のことを指す。「淡雪のような白いにごりが残るお酒は、近年、世界的にも注目を集める存在です。とろとろした口当たりや特有の甘みとともに、みかんやレモンの皮を想起させるフレーバーが特徴。その風味と相性がいい山椒粉をふると、ますます華やかになります」。ピリッとしたスパイスによりお酒の甘みが少し抑えられ、ぐっと飲みやすく、料理とも合わせやすくなる。
廣島晴弥の切子のグラス
辻和美氏に師事し、独立後は金沢市でウィスキーや日本酒などを楽しむための酒器や、デザート用カップなど、用途に合わせて受注生産するカットグラス作家の道を歩む。やや小ぶりのグラスそれぞれに、オリジナルの文様を大胆なカットで施す作風が特徴。ガラス面に当たる光が乱反射するサマは見惚れるような美しさ。酒を注ぐとさらに湿度をまとい、幻想的な世界へと誘う。
#特別純米酒とコーヒー氷
大人のための"冷酒コーヒー"
「コーヒーを淹れたら製氷機で凍らせ、"コーヒー氷"を作る。グラスに数個入れ、日本酒を注ぐだけで魅惑的な飲み物のでき上がり。選びたいのは精米歩合が60%以下の米と麹だけを使用し、米本来のうまみとすっきりした後味が印象的な特別純米酒。コーヒーは苦さ控えめの浅煎り~中煎りが最適です」。氷の溶け具合で、味の変化を感じるのも楽しい。「手頃な価格の日本酒やコーヒーも劇的においしくなるのでぜひトライしてほしい」
谷口 嘉の七角形グラス
光をやわらかく透過する、プリミティブな透明感。コンクリートの型にガラスを吹き込み成形する独自の型吹き技法によって生まれる、表面のそこはかとないゆらぎが薄氷のよう。肌に吸いつくようなテクスチャーが魅力の作品は、多摩美術大学を卒業後、神奈川県川崎市で活動する作家・谷口嘉氏によるもの。高さ約10㎝のグラスは、よくある六角形や八角形ではなく、コンパスや定規で描くことが不可能な七角形。角柱グラスはミニマルでありながらも神秘的なムードが。どんな食卓もスタイリッシュに格上げする、凛とした佇まい。
#4mmp酒とドライフルーツ
ワインのような香り、飲み心地。日本酒界のニューウェイブ
「伝統的な日本酒の概念を覆したいという思いから、コロナ禍に生まれた新ジャンル。"春陽""みずほのか"などの低グルテリン米を用いた結果、4mmpと呼ばれる香気成分を発見。ソーヴィニヨン・ブランのワインのようなマスカットやライチ、青りんごを思わせる新しい香りで、ペアリングでは特にドライフルーツと相性がいい。香りまで見事に調和する、至極フルーティなペアリングです」
アンドゥムルメステールのワイングラス
"アントワープ・シックス"と称されたアン・ドゥムルメステール。ファッション界の第一線から退いたあとは、趣味でもあったテーブルウェア全般のデザインに尽力している。特にガラスは澄み渡る透明感、なめらかな曲線を描くフォルムがアートピースのよう。テーブル上に花が咲いたような美しさに、ファンも多数。
#スパークリング酒とバニラアイス
手軽だけどリッチな味わい。極上デザートに舌鼓
「シュワッとした口当たりのスパークリングは乾杯のお酒としても人気ですが、食後のデザートにもなる優れもの。市販のバニラアイス(さっぱりタイプがおすすめ)にかけるだけで、贅沢なチーズケーキのようなニュアンスに。合わせるのは大吟醸のスパークリング。華やかな香りとゴージャスな味わいで、チーズや生クリーム、アイスクリームなど脂肪分を含む乳製品とも相性がいいです」
小川真由子のコンポートグラス
パート・ド・ヴェールとは、型の中にガラスの粒を入れて焼成し、型を壊して取り出す、古代メソポタミア時代に起源を持つガラスの技法。膨大な手間と時間をかけてこの技法と向き合うのが、2021年に墨田区にある「硝子企画舎」から独立した小川真由子氏。マットな触感、ミルキーな白から淡いブルーへと変化する水彩画のようなグラデーション、柔和なムード……。本来のあでやかなデザインを、日本人らしい感性によって、崇高かつ、独特の奥ゆかしさをたたえた姿に蘇らせる。
新しい日本酒の嗜み方におすすめの銘柄
チャーミングな味から魅惑的なテイストまで、多彩な表情を持つ日本酒が増加中。千葉氏が厳選した、意外性がありながらも間違いのない銘柄とは?
1 玉川 純米吟醸 Ice Breakerとスペアミント
オックスフォード大学出身のフィリップ・ハーパー杜氏が造る、夏限定の日本酒。アルコール度数は17〜17.9%と高めで、氷を溶かしながらオンザロックで楽しむのがおすすめ。濾過も、火入れも、加水もしない、"生まれたままの日本酒"のような無濾過生原酒ゆえ、飲みごたえはありながら、みずみずしいのが特徴。清涼感の強いスペアミントとのハーモニーで、弾けるような夏を演出する。
2 川鶴 讃岐くらうでぃとやまつ辻田の粉山椒
(左)一般的に日本酒のアルコール度数は15%前後だが、こちらは6%。軽快な飲み心地ながら、白麹を通常の3倍も使ってるので甘酸っぱくうまみが強い。オリと呼ばれる濁り成分も入っているので至極クリーミー。スパイス料理との相性も◎。
(右)大阪の老舗和風香辛料店の逸品。若葉色と清々しい芳香を損なわないよう石臼製法を貫く。
3 南部美人 特別純米酒と丸山珈琲のコーヒーバッグ「ベリー」
(左)2017年「インターナショナルワインチャレンジ」において世界中の1245銘柄の中からチャンピオンに輝いた名品。地元農家と手がける岩手オリジナルの酒造好適米"ぎんおとめ"や折爪馬仙峡の伏流水を用いて醸す究極のテロワール。芳醇でうまみがのびやかに広がるのにキレがある。
(右)果実味あふれるシングルオリジンコーヒー。便利なコーヒーバッグタイプ。
4 EIKUNholicと堀内果実園のセミドライ マンゴー
(左)"飲み飽きない食中酒"をテーマに掲げて日本酒を醸す静岡の老舗酒蔵。千葉麻里絵氏とのタッグにより生まれたお酒は、果物のようにジューシーな香気を放ち、軽快な後味。ワイン感覚で、幅広い食事とのペアリングも楽しみやすい。冷やして飲むほか、氷を浮かべても美味。限定品。
(右)稀少な宮崎県産完熟マンゴーをセミドライに。香りや甘みがとめどなくあふれる。
5 獺祭 純米大吟醸 スパークリング45とLOTTEの爽 バニラ
(左)世界を股にかけて日本酒の文化を広げるブランド。グローバルにファンを広げる一方で、今も伝統的手法で酒造りに励む、骨太な酒蔵でもある。人気の高いこちらは、華美な香りとふくよかな甘み、余韻のあるキレが特徴。日本酒の魅力を直球で伝えるためににごり酒を用い、自然発酵の力を利用して瓶内二次発酵をさせる。
(右)微細氷入りで、口どけが爽快なので日本酒と好相性。
Profile/千葉麻里絵 「GEM by moto」プロデューサー
ちば まりえ●山形大学で食品の物質加工を学び、日本酒の世界へ。学んだ化学的知見を活かしバー「GEM by moto」で、お酒と食事のペアリングを提案。柔軟な発想でさまざまな銘柄のプロデュースも行い、日本酒ブームをけん引する。
からの記事と詳細 ( 心ほどける、静かな時間へ。夏の終わりは、日本酒とガラスの器 - ライフスタイル | SPUR - SPUR.JP )
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