グレン・キャンベル、BBCスコットランド政治編集長
ニコラ・スタージョン氏が15日、英スコットランドの自治政府首相を辞任すると発表した。これはスコットランド政治、さらにはイギリス政治そのものにとって重大な意味を持つ。
スタージョン氏は1999年にスコットランド自治政府と議会が設置された時から議員を務め、その後は16年近く、副首相と首相を歴任してきた。政治家にとっては重責の大役だ。
スタージョン氏は、自分の決断は直近の政治的なプレッシャーによるものではないと強調する。しかし、政治的プレッシャーは十分に大きい。
たとえば、国民保健サービス(NHS)が新型コロナウイルスのパンデミックの影響と人手・資金不足のために抱える長大な診療遅れの問題。教職員のストライキ。トランスジェンダーの受刑者が入る刑務所の管理問題。さらには、新しい飲料ボトルのデポジット制度など、問題は山積している。
加えて、スコットランド独立をめぐる膠着(こうちゃく)もある。スタージョン首相は、自分にはこの膠着は打開できないと結論したようだ。自分にそれができるとわずかにでも思うなら、スタージョン氏は辞任していないはずだ。
こうした課題に取り組むのは、後任の役目となる。まだ候補者は出ていないが、(産休中の)ケイト・フォーブス財務相やアンガス・ロバートソン憲法相などが出馬を真剣に検討しているかもしれないと取りざたされている。
スタージョン氏が率いてきたスコットランド国民党(SNP)の執行部は今後、党首交代の日程を決めなくてはならない。党首選には6~8週間かかる見通しだ。
3月19日に予定されているSNP党大会は、独立について党の方針を決める場所になるはずで、イギリス議会あるいはスコットランド議会の選挙を、独立に関する住民投票と位置付けるかどうかを決めるはずだった。しかし、今となってはこれがどうなるのかも疑問だ。
SNPは本当に、次の党首がだれになるのかも分からないまま、そして独立に関する党の方針にその新党首が同意するのかも分からないまま、独立について方針を決めてしまうのか?
党の執行部が新しくなれば、独立について(そしてそれ以外のたくさんのことについて)新しい考えが出てくるかもしれないし。閣僚や顧問の顔ぶれも変わるだろう。緑の党とのこれまでの連立合意がそのまま続くという保証もない。
スタージョン氏の辞任演説は、これまでを振り返る内容で、時に感情のこもったものだった。スコットランド政界トップの立場は、簡単に手放せるようなものではない。特に、「スコットランド独立」という自分の究極の使命が実現できていない状態では。
辞任発表は、予想外でもあった。
スタージョン氏の今後について憶測は以前から飛び交っていたし、私は彼女が任期満了しないはずだと確信していたが、辞任するにしてもそのタイミングは次のイギリス総選挙だろうと思っていた。
実際には、それよりずっと早く辞任することになった。第一報を伝えたのはBBCだった。
スコットランド議会が休会中、自治政府首相が重要な記者会見を開くことはめったにない。
例外はこれまでもあった。特にパンデミックの渦中には。しかし、今の2月休会の最中に何か重大発表があるとは予想されていなかった。
なので、スタージョン氏が午前11時に記者会見を開く予定だと知らされたとき、私は直感的に、これは一大事だと感じた。
スコットランド政府の複数の消息筋に、首相辞任かと観測を含めて尋ねてみると、誰からも明確な答えは返ってこなかった(答えられなかったのかもしれない)。
そこで、真相を知っているかもしれない人に思いつく限り電話をかけまくり、首相がいったい何を発表するつもりなのか見当をつけようとした。
こういう事態になると、返事をくれる人ばかりではないし、返事をしてくれるにしても暗号めいた答えになりがちだが、伝わってくる内容は実にはっきりしていた。スコットランドで最も長く務めた自治政府首相が、もう辞めようと決心したのだ。
エディンバラにある首相公邸ブート・ハウスでスタージョン氏が辞任会見をしている最中、報道陣と一般市民が、公邸の外に集まった。集まった何十人もの市民の中には首相支持者も、首相に批判的な人もいた。
辞任発表が終わると、スタージョン氏は公邸の窓に近づき、路上に集まった人たちに手を振った。これが、自治政府首相としてのお別れのあいさつでもあった。
からの記事と詳細 ( 【解説】 一つの時代の終わり……スタージョン氏が手を振る 英スコットランド自治政府の首相を辞任 - BBCニュース )
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