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Wednesday, May 31, 2023

「歴史の終わり」の真意、そして新しい危機 フランシス・フクヤマ ... - 朝日新聞デジタル

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聞き手・池田伸壹

 冷戦崩壊という歴史的な節目に、ベストセラー「歴史の終わり」で世界の論壇に登場したフランシス・フクヤマ氏。それから30年、歴史は終わらず、勝利を宣言したはずだった民主主義と自由主義は新しい挑戦を受けている。中国の台頭などで、20世紀末とは異なる地点に立つ人類が、いま抱える問題について話を聞いた。

 1952年、米シカゴ生まれの日系米国人3世。国務省などを経て、スタンフォード大学シニアフェロー。邦訳書に「歴史の終わり」「リベラリズムへの不満」など。

 ――あなたはベルリンの壁が崩壊した1989年の論文を元にした著書「歴史の終わり」(92年)で、自由民主主義の勝利を論じて注目されました。しかし今、ウクライナでは、自由民主主義が歴史的な挑戦を受ける事態になっています。このような戦争がヨーロッパで起こるとは、当時は予想できなかったのではないですか。

 「確かに、89年は人類の歴史の中で、本当に特別な瞬間でした。もう戦争がこの地上からなくなるかも知れないと、世界中が本気で期待をしていました。しかし、哲学者カントが望んだ恒久平和は、訪れませんでした」

 ――米国務省やハーバード大学大学院のスタッフとして、旧ソ連時代から、ロシアの対外政策を研究・分析してきました。なぜプーチン大統領は、あのような行動に踏み切ったとみていますか。

 「プーチン氏のロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、1945年以降、人類が守ってきた規範を根底から踏みにじり、19世紀以前の世界に戻そうとするような行動です。プーチン氏らの発言を追い続けてきましたが、彼は、ずっと前からウクライナを征服したかったのだと思います。それは、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大への対応といった安全保障上の理由ではありません」

 「彼にとっては、かつて存在…

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