崩れない確信がありました
4試合を残してのJ1リーグ制覇。しかもここまで1敗したのみ。圧勝でリーグ制覇を成し遂げたかにも映るが、その道のりは決して平坦なものではなかったと登里は振り返った。 「昨年は圧倒する試合が多かったですけど、今年はギリギリのところでの勝ちだったり引き分けだったりというところがありました。ただ色んな選手が抜けたりしましたけど、自分たちができることを整理しながら、一人ひとり割り切ったサッカーができていたと思います」 難しい時期は、東京五輪によるリーグ中断が明けた直後に訪れた。柏と広島に引き分け、福岡に敗れた8月の連戦だ。首位を走ってはいたが、勝ち点が伸びず、2位横浜FMに差を詰められることにもなった。だが、チームには若く伸び盛りの選手がいる一方で、修羅場を潜り抜けてきた経験者もいた。この苦しい時期を乗り越えられた要因を登里は明かした。 「入団してから強いフロンターレしか知らない選手もいます。ですから勝つのが当たり前の若い選手は、勝てない時期をネガティブにとらえるというのもありました。引き分けが続いて、福岡に負けた後、チームが崩れそうなときに、小林悠選手と話しました。『昔に比べたらこんなの気にすることないし、むしろ一敗しかしていない』と。そうしてポジティブに変換できところもまたチームが前向きにチャレンジできた(理由)かなと思います。欲を出すことも大事ですけど、自分たちにできることを整理してまた試合に挑むことも重要だったので、そういうバランスも含めてすごく良い循環がありました」 続けて優勝することは難しい。周囲のマークがきつくなるが、優勝という最大の成功体験が逆にチームの変化を阻み、その場にとどまってしまうからだ。結果、新陳代謝が進まず、やがて勝てなくなっていく。しかし川崎Fは今季連覇を飾り、直近5シーズンで4度目の優勝を成し遂げた。主力だった選手が抜ける中で新陳代謝しながらチーム力を高めてきた。その中で経験者たちは率先して進化を目指し、自らの経験を若い選手たちに伝え、導いている。簡単には成し得ない好循環が現在の川崎Fにはある。 「常に自分たちにベクトルを向けて課題に向き合ってこれました。崩れることは簡単。でも誰も人のせいにすることはなかった。そういうチーム状況というか、野心だったり、芯の強さはあったので、勝てない状況もあったりしましたけど、崩れないだろうという確信はありました」 田中碧や三笘薫が夏に移籍してもチームは大崩れせず、シャーレを掲げた。その事実が、川崎Fのチーム力を証明している。ただ、登里が目指すのは、さらなる高みだ。 「(谷口)彰悟がケガでいない中、キャプテンマークも巻くことが多かったですけど、しっかりと勝ち切るとか、チーム全体を見る重要性だったりにも気づけました。自分自身成長できたのかなと思います。ただルヴァンカップだったり、ACLというところで、彰悟がいない中、勝てなかった。そのことは自分も悔しい思いでいっぱいなので、来年以降につなげていきたいと思います」 今季も天皇杯で勝ち進んでおり、2年連続で二冠達成の可能性を残すが、J1優勝の直後にして、登里は今季獲れなかったタイトルへの意欲を口にした。それこそが毎年、進化を続け、タイトルを手にし続けている川崎Fの強みだろう。チームを引っ張る選手の飽くなき欲求は、間違いなくチーム全体に好影響を及ぼしている。
サッカーマガジンWeb編集部
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