松下洸平が、俳優や歌手活動など多方面に活躍の場を広げている。歌手として芸能界デビューし、演技の道に進んだ20代は葛藤も多く「この仕事はこれで最後にしようと何度も思った」と振り返る。朝ドラでブレイクを果たすまで道のりや、12日に開幕を迎える主演の音楽劇「夜来香(イエライシャン)ラプソディ」への意気込みを聞いた。(奥津 友希乃)
演技、絵画、ダンスと多才ぶりを発揮する松下だが、意外にも芸能界入りのきっかけは歌だった。
油絵画家の母の影響で幼少期から絵画に親しみ、美術系の高校に進学。「美術関連の仕事に就くだろう」と漠然と将来を想像していたころ、偶然鑑賞した映画「天使にラブ・ソングを2」が人生を変えた。
「中学時代からダンスを習っていて、これで歌なんか歌えたら楽しいだろうなと心のどこかでは思っていた。そんな時に『天使に―』で、同世代がゴスペルに熱中して夢を追う姿に感化され、歌手になることを決めました」
音楽の専門学校を経て、08年に歌いながら、イントロなどで絵を描く“ペインティング・シンガー・ソングライター”という異色の肩書きでCDデビュー。
「当時は音楽だけやるつもりだったけど、ちょっと歌えるぐらいじゃ全然売れなかった。特技の絵を生かそうと周りが色んな可能性をくんでくれましたが、現実の厳しさに最初はかなり面を食らいましたね」
苦悩の中にいた09年、思わぬ形で俳優への道が開けた。周囲の勧めでミュージカル「GLORY DAYS」のオーディションを受け、演技未経験ながら主要キャストの座を射止めた。
「ひとり悩んで音楽活動をしている時と違い、みんなでお芝居するのがとにかく楽しくて、寂しくなかった。これをもう一回経験したいと純粋に思いました」。
同舞台で共演し、同世代のAAA・西島隆弘の存在に突き動かされた。
「当時、既にスターだった彼から得る刺激がすごく大きくて、歌も芝居も本当に上手で憧れました。舞台後、芝居を続けると決めたことを一番最初に電話で報告したのもにっしー(西島)でした。今の僕をみてどう思っているのかな…。ちょっと気になりますね」
10年に歌手活動を休止し、俳優業に専念。確かな才能はありながらも、すぐには花開かず、20代は葛藤の多い日々だった。
「そもそも、自分には表現者として前に立つ度胸が足りていなかった。臆病で、それと同時に『よく見られたい』と自分に対しての欲もあった。それが重荷で、20代の頃は一つ作品が終わる度に『これで最後にしよう』と思っていました」
30歳を迎えたタイミングで「ありのままの自分でいること」を心掛けたことで、「難しく考えることがなくなり、芝居が楽しくなった」。19年には、NHK連続テレビ小説「スカーレット」で主演・戸田恵梨香の夫・八郎役で話題を呼び、その人気は一躍全国区に。
「朝ドラは、オーディションをめげずに受け続け、4回目でやっと決まりました。心のどこかでは『明確にブレイクしたい、このままじゃ終われない』という思いがずっとあったので、うれしかったですね」
朝ドラ以後、活躍の場を広げ、憧れの人との共演も果たした。昨年、日本テレビ系番組の人気コーナー「グルメチキンレース ゴチになります!」にレギュラー出演。
「高校時代に歌手になりたいと思っていた当時、大ファンだった『めちゃ×2イケてるッ!』で岡村(隆史)さんが、音楽を志す若者に厳しいことを言ったシーンがあった。芸事で生計を立てる難しさや覚悟が必要だということをその言葉に学び、心にがっつり響いたんです。ゴチで共演した時に、そのことをナイナイのお二人にお話ししたら、すごく喜んでくださいました」
俳優業では、爽やかな好青年から殺人犯役まで幅広くこなし、数々の話題作に引っ張りだこに。TBS系ドラマ「最愛」でも存在感を放ったが、「今まで以上に大きな役をいただくことが増えましたが、仕事があることが当たり前ではない」と謙虚な姿勢を崩さない。
昨年からは、原点である歌手活動を再開。ミニアルバム「あなた」をリリースし、全国ライブも行った。
「野放しになっていた音楽をここでしっかり形にしたいという思いがずっとあった。ミュージシャンとしては本当に半人前ですが、僕にとって音楽は手放せないものなんです」
12日に開幕する音楽劇「夜来香―」(27日まで)では主演を務め、「東京ブギウギ」などで知られる作曲家・服部良一氏を演じる。「服部さんの音楽に対する思いが強くて、それに見合った芝居をすべく必死です。音楽は何のためにあるのかを考えさせられ、僕自身も音楽を愛する人間として、非常に響くものがあります」
今月14日には、作詞作曲を手掛け「初めて女性目線で恋愛を描き、いい大人がキュンについて色々と考えた」というラブソング「KISS」を配信予定。フジ系ドラマ「やんごとなき一族」(4月14日スタート)の出演も控える。
「歌を歌う僕の姿は、まだまだ新鮮に見られることが多い。まずは、その壁を打ち破ることが課題。最終的に、芝居と音楽どちらもフラットな目で見てもらいたい。これから先がどうなっていくか楽しみです」。穏やかな語り口の中にのぞく強い信念は、葛藤や苦悩を乗り越えた努力の証だ。
◆松下洸平(まつした・こうへい)1987年3月6日、東京都生まれ。35歳。2008年に「洸平」名義で歌手デビュー。12年フジ系「もう誘拐なんてしない」でドラマ初出演。18年舞台「母と暮せば」、「スリル・ミー」で、19年読売演劇大賞の杉村春子賞・優秀男優賞受賞。主な出演作は、20年日テレ系ドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」、21年映画「燃えよ剣」など。175センチ、血液型A。趣味はドライブ。
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